10のSNSが対象 違反時は最大4,950万豪ドル(約51億円)の罰金
AIによる顔認識で年齢確認 措置の効果を巡り賛否も
オーストラリアは10日、16歳未満の青少年によるSNS利用を制限する措置を施行した。主要国としては初の取り組みとなる。

今回の措置は「Facebook」や「Instagram」、「YouTube」、「TikTok」、「X」など、10のSNSプラットフォームが対象で、各社は16歳未満の利用者アカウントからSNSにアクセスできないよう措置を講じる義務がある。合理的な対策を講じなかった場合、最大4,950万豪ドル(約51億円)の罰金が科される。一方で、利用者本人や保護者が処罰の対象となることはない。
ログインしたアカウントでの利用のみが制限され、ログインしていない状態であればコンテンツの閲覧は可能となる。政府がログイン制限方式を採用したのは、アルゴリズムやプッシュ通知など中毒性の高い機能から青少年を守る狙いがあるためだ。オーストラリアのオンライン安全規制機関「eセーフティ」は「青少年はログイン状態にある時、強い圧力やリスクにさらされやすい」と指摘している。
現在、国内では16歳未満の青少年の約96%にあたる100万人以上がSNSアカウントを保有しているとされ、年齢確認をどのように実施するかが大きな課題となっている。
顔認識などAIで年齢識別
SNSプラットフォームは人工知能(AI)による顔認識技術などを用いて、16歳未満の利用者を識別する。英国のスタートアップ「Yoti」などのIT企業は、すでにMetaやTikTok向けにセルフィー解析を用いた年齢確認サービスを提供している。
さらに音声や位置情報、利用パターンなど複数の情報を総合的に分析して年齢を把握する。Metaは複数の手法を活用していると明かしているが、具体的な方法は公表していない。利用者が回避策を見つけることを防ぐためだ。
オーストラリア当局は、年齢識別の過程で誤りが生じる可能性があることを認めており、プラットフォームには訂正手続きの提供義務も課せられる。
eセーフティは「一部の青少年がタバコや飲酒規制と同様に、年齢制限を回避する方法を見つける可能性はある」と指摘しつつも「規制自体が一定の効果を持つことは明らかだ」と述べている。

効果を巡り賛否が分かれる
今回の措置の実効性については、賛否が分かれている。アニカ・ウェルズ通信部長は英国BBCに対し、「一つの法律でアルファ世代を略奪的なアルゴリズムから守ることができる」と強調した。
メルボルン大学のスコット・グリフィス教授も、「主要SNS企業がより多くの青少年の健康を実質的に保護することにつながる」と評価し、試みる価値があると述べた。
一方、シドニー大学のキャサリン・ページ博士は「全面的な禁止措置は効果が薄い場合が多く、子どもたちがかえってより安全でないオンライン空間を探す可能性がある」と警告した。
SNSプラットフォームも反発を示している。Metaは「青少年に安全なオンライン体験を提供するという目的には共感するが、友人やコミュニティから断絶させることは解決策にならない」と不満を表明した。「YouTube」も「この措置により、オーストラリアの子どもたちがYouTube上でより危険な状況に置かれる可能性がある」と主張した。
それでも、これらのプラットフォームは一旦、法律に従い制限措置を講じる方針を示している。
各国、類似措置導入を検討
オーストラリアの動きを踏まえ、同様の措置を導入しようとする国も出てきている。デンマークでは15歳未満のSNS利用を制限する法案の準備が進んでおり、マレーシアも来年から16歳未満の利用を禁止する方針だ。
ニュージーランドやスペイン、ノルウェー、シンガポール、インドネシアなども関心を示している。欧州議会も先月、16歳以上であれば親の同意なしにSNSにアクセスできるようにする決議案を可決した。
ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州連合(EU)委員長は先月、「オーストラリアの先駆的なSNS政策に触発された」と述べ、EUとしても規制を導入する可能性を示唆した。
eセーフティのジュリー・インマン・グラント委員長は「転換点に達した」と語り、オーストラリアの措置がビッグテック規制における「最初のドミノ」になるとの見方を示した。
「ロイター通信」も、今回の動きを「世界中の立法者が研究する実験の始まり」と評価している。
















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