国営の中国中央テレビが異例の公開
香港紙SCMP「国際戦略の変化を示す可能性」

中国人民解放軍が、メキシコやキューバ周辺などで米国を想定した模擬戦闘訓練を実施する様子が、国営放送で異例に紹介された。米国の近海に当たる地域を舞台にした想定が含まれており、中国の対外軍事戦略が新たな局面に入った可能性がある。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、最近、中国河南省許昌で行われた人民解放軍のウォーゲーム(模擬戦)が国営の中国中央テレビで放映され、メキシコとキューバ近海で交戦する想定のシーンが含まれていた。SCMPは、中国が南米諸国と経済協力を深める一方、軍事面での存在感は表立って示してこなかったとし、今回の放映は国際戦略の変化をうかがわせると論じた。
記事は、中国が麻薬対策を名目にベネズエラへ圧力を強める米国を「一方的な嫌がらせ」と批判してきた経緯にも触れている。ベネズエラの原油生産のうち約75%が中国向けとされ、エネルギー面の結びつきが強い点も背景として挙げた。
模擬戦では人工知能(AI)も活用され、キューバ、メキシコ湾、カリブ海、オホーツク海、台湾など複数の地域を舞台にした仮想戦闘が行われたという。
公開された画面の一つでは、敵軍を示す航空機や艦船が米テキサス州ヒューストン近郊に集結した後、メキシコ湾とカリブ海へ向かう様子が表示され、中国側の部隊はキューバおよびメキシコ周辺に展開する構図が示された。米本土周辺での有事を含め、より踏み込んだ想定を組み込んだ可能性がある。
今回のウォーゲームは、全国の約20部隊と士官学校が参加して許昌で実施された。報道によると、数十種類に及ぶ戦闘再現システムはいずれも中国製で、人民解放軍は、全軍規模で進めてきたウォーゲーム運用の試行事業が開始から1年で実質的な成果を挙げたと説明した。
模擬戦の具体的内容は通常、機密性が高い。国営放送は今回の放映について、低コストで指揮官が実戦的な戦い方を学べるようにすることが狙いだと伝えている。













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