
中国軍内部で序列2位の張又侠(ジャン・ヨウシア)中央軍事委員会副主席が粛清された背景が明らかになった。
中国国防部は24日、ジャン副主席に対する調査開始を発表し、「深刻な規律違反と違法行為」があったと明かした。このため、中国内外では習近平国家主席が軍内の派閥を排除し、軍に対する統制力を強化する動きとの見方が広がっていた。
しかし、今回の粛清には米国への情報流出が絡んでいる可能性も浮上した。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は25日(現地時間)、軍高官を対象に行われた非公開ブリーフィングの内容を独自に入手したとして、具体的かつ衝撃的な疑惑を報じた。
関係筋によると、ジャン副主席は中国の核兵器プログラムに関する中核技術データを米国に渡した疑いが持たれている。また、前国防部長の李尚福(リー・シャンフー)氏の昇進を支援する見返りとして巨額の賄賂を受け取ったほか、政治的派閥を形成し、中央軍事委員会内で権限を乱用した疑いも指摘されている。
ジャン副主席は軍装備の調達を担う機関を監督していたが、巨額の予算が動くこの仕組みの中で、昇進の見返りに多額の金銭を受け取っていたとされる。
「尻尾」をつかまれた経緯
ジャン副主席をめぐる証拠の一部は、中国の民生・軍事核プログラム全般を監督する国有企業「中国核工業集団公司」の元総経理、顧軍(グー・ジュン)に関する捜査から浮上したとされる。
中国当局は19日、グー氏に関する調査結果を公表したが、同氏の捜査がジャン副主席を核分野の安全保障侵害事件と結びつける端緒になったという。

さらに今回の捜査は、習主席がジャン副主席の在任期間(2007〜2012年に瀋陽軍区司令官を務めた時期)を重点的に洗い直すため、特別調査チーム(TF)を編成したことで急展開した。調査チームはすでに東北部の瀋陽(シェンヤン)市に到着し、ジャン副主席の影響力が残るとみられる軍施設ではなく、現地のホテルを拠点に捜査を進めているとされる。
中国軍関係者はWSJに対し、「ジャン副主席とともに粛清された劉振立(リウ・ジェンリー)・連合参謀部参謀長に対する調査も始まった」と説明した。当局はすでに両氏と同時期に昇進した将校らの携帯電話を押収し、数千人規模の将校が潜在的な捜査対象になったと報じられている。
習主席が任命した職業軍人委員6人、残るは1人のみ
ジャン副主席は、革命元老や高級党幹部の子弟で構成される「太子党」に属し、党中央政治局員として習主席に次ぐ中国軍序列2位とされてきた。
同時に粛清されたリウ参謀長は、末端兵士から出発し、習主席の信任を得て連合参謀部参謀長にまで昇進した「伝説的存在」とも評される。

習主席は3期目続投を確定させた2022年、ジャン副主席やリウ参謀長ら軍出身の委員6人を任命したが、現在残っているのは昨年10月に副主席へ昇進した張聖民(ジャン・ションミン)上将ただ1人だという。
WSJによると、2023年夏以降、調査対象となったり解任された高級将校や国防産業幹部は50人を超える。対象には陸軍、空軍、海軍、ロケット軍、準軍事警察の最高幹部に加え、台湾に焦点を当てる戦区司令部も含まれるとされる。中国軍の「ナンバー2」に対する粛清は前例がなく、最高指揮部の全面的な崩壊を意味するとの見方も出ている。
また、失脚したジャン副主席とリウ参謀長はいずれも実戦経験を持つ将軍だった。こうした粛清が続けば、将官級人材の不足を招き、中国軍の指揮・訓練や作戦遂行能力に短期的な空白が生じる可能性が高まる。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の安全保障研究プログラム責任者、テイラー・フラベル氏は「大規模で精緻な軍事組織を運営する規模と複雑さを考えれば、こうした最上級ポストの空白は持続不可能だ」と指摘した。
その上で「短期から中期にかけて、人民解放軍が主要かつ複雑な軍事作戦を遂行する現在の即応態勢に影響が及ぶのは避けられない」と述べた。













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