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「中国は怒っていない、計算している」──イラン戦争で“静観”を選んだ本当の理由

荒巻俊 アクセス  

引用:depositphotos
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中国はイラン戦争を批判しながらも、米国を直接非難する発言は控える慎重な外交を続けている。今月末のドナルド・トランプ米大統領の訪中を前に、米中関係を安定的に管理しようとする意図がにじむ。イランとの関係より、対米交渉で得られる実利を重視しているとの見方も出ている。

起きるべきではなかった戦争と批判しつつ、米国には協力と共生を強調

中国の王毅外相は8日、全国人民代表大会の外交分野に関する記者会見で、イラン戦争について、本来起きるべきではなかった戦争であり、誰の利益にもならないと述べた。そのうえで、直ちに武力行使を止め、戦争を終わらせるべきだと訴えた。王毅外相は中国戦国時代の思想家、韓非子の言葉である「兵者、凶器也、不可不審用」も引用した。戦争は災厄を招く手段であり、用いるとしても極めて慎重でなければならない、という意味である。

ただ、王毅外相はイラン侵攻を批判しながらも、侵攻当事者である米国とイスラエルの名指しは避けた。むしろ米中関係に関する質問には、相互尊重を基礎に平和共存の原則を守り、協力と共生を追求すべきだと語り、関係改善への意欲を前面に出した。

中国は、米国がイラン空爆を始めた先月28日以降も、米国への強い批判をできるだけ抑えている。今月1日、アヤトラ・アリ・ハメネイ師の死亡が伝えられた際も、14時間後になってようやく主権侵害という原則論にとどまる立場を示した。さらに、中国全国人民代表大会の婁勤倹報道官は4日の記者会見で、習近平国家主席は両国がパートナーであり友人になることが歴史の示唆であり、現実の要請でもあると強調してきたと述べたうえで、首脳外交は米中関係において代えがたい役割を果たしていると評価した。

トランプ大統領の訪中前に摩擦最小化へ

中国はこれまで、西側の制裁を受けるロシア、ベネズエラ、イランなどから国際相場より安い原油を調達し、製造業のコスト圧縮につなげてきた。昨年、内需が低迷するなかでも5%の経済成長率を維持できた背景には、こうしたコスト競争力を土台とする低価格輸出の拡大があったとみられる。だが、米国がベネズエラとイランへの圧力を相次いで強めたことで、この戦略の持続性は見通しにくくなった。

とりわけイラン産原油は、中国の海上原油輸入全体の13.4%を占め、4.7%のベネズエラ産を大きく上回る。中国の原油輸入量の約3分の1は、現在封鎖されているホルムズ海峡を通過している。こうしたなか、ロイター通信によると、中国はホルムズ海峡を経由する原油とカタール産液化天然ガス(LNG)の輸送確保を巡り、イランと協議を進めているという。

それでも中国が批判の度合いを抑えているのは、今月末のトランプ大統領の訪中を前に、米国との正面衝突を避けたいとの計算があるためとみられる。米中両国は首脳会談を通じ、それぞれの実利確保を狙っている。米国は中国に原油や天然ガスの購入拡大を迫る構えで、中国は習近平国家主席の4期続投の可否が決まる第21回中国共産党全国代表大会を約1年後に控え、台湾問題で米国から一定の譲歩を引き出したい考えだ。

中国が積極的に動くのは核心的利益だけ イランは1950年代の北朝鮮ではない

中国にとってイランは、米国との関係悪化を覚悟してまで支援するほど戦略的重要性が高くないとの分析もある。イラン産原油の比率13.4%は小さくないものの、代替が利かない水準ではない。実際、中国は新たな供給が止まっても124日間は持ちこたえられるだけの石油とガスを備蓄しているうえ、ロシア、ギニア、ブラジル、カナダなどへ供給源の多角化も進めてきた。さらに、世界の太陽光パネル生産の80%を占めるなど、再生可能エネルギーへの転換を通じて石油依存そのものを徐々に引き下げてきた。

経済面の影響も限られる。中国はイラン全体の貿易量の3分の1を占める一方、イランが中国全体の貿易量に占める割合は1%未満にすぎない。イラン向け直接投資(FDI)についても、制裁リスクを警戒して慎重姿勢を保ってきたため、仮に情勢が悪化しても損失は大きくないとみられる。今後、イランで親米政権が発足したとしても、中国が同国経済の重要な支えである以上、経済交流が全面的に断たれる可能性は高くない。隣接国ではない点を踏まえれば、中国に及ぶ戦略的、安全保障上の影響は経済面以上に限定的だ。こうした状況で、中国があえてイラン寄りの立場を鮮明にし、米国との関係悪化や二次制裁のリスクを引き受ける理由は乏しい。

イスラエルのシンクタンク、エルサレム安全保障外交センターの研究員、オデッド・アイラム氏は、中国は核心的利益が絡めばためらわないとしながらも、イランは1950年代の朝鮮戦争当時の北朝鮮ではないと指摘した。そのうえで、中国にとってイランは防衛線ではなく、あくまで資産にすぎないと分析している。ワシントンの民主主義防衛財団のクレイグ・シングルトン上級理事も、中国は口先では強く出ても、実際にリスクを取るつもりはない都合のよい友人だと評した。国連では存在感を示しても、イランに実質的な支援を与えることはないだろうとみている。

米国の戦略的余力の分散は中国に好機

イラン戦争は、中国にとってむしろ好機になり得るとの見方もある。戦争が長期化すれば、米国の戦略的余力が中東に集中し、台湾への武器売却や関与が弱まる可能性があるためだ。台湾の淡江大学国際関係学科の李大中教授は、米国がロシア・ウクライナ戦争と中東戦争という二つの主要紛争を同時に管理しなければならなくなれば、台湾のためにどこまで現実的に資源を投入できるのかを考えなければならないと述べた。こうした変化が一時的なものであれ、長期化するものであれ、米国の武器供給網や戦略の重心、台湾への関心に影響が及ぶのは避けられないとの懸念を示している。

加えて中国は、米国によるイラン空爆を利用し、発展途上国に対して内政不干渉を重んじる国という印象を与えることもできる。トランプ第2次政権の発足以降、一方主義を強める米国に代わり、多国間主義を守る存在としてのイメージを固める余地があるというわけだ。中国世界化センターの王子晨副事務総長は、これによって中国は戦略的な柔軟性を確保でき、同盟国の安全保障を保証する際に伴うコストや危険も回避できると分析した。

荒巻俊
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