買いだめの列がないガソリンスタンド「まだ実感ない」

東京都内のガソリンスタンドは普段と変わらない様子だった。米国とイスラエルによるイラン空爆を受け、国際原油価格の急騰への懸念が高まっているものの、日本国内ではまだ目立った影響は確認されていない。ただし、価格上昇が続けば生活全般に影響が及ぶ可能性があるとの不安も見え始めている。
9日午後、東京都渋谷区と世田谷区周辺のガソリンスタンド4か所を確認したところ、買いだめのために車が列を作るような光景はどこにも見られず、むしろ閑散としていた。渋谷・代官山のあるガソリンスタンドの従業員は「まだ特別な変化はない」と答えた。
ドライバーの間でも、原油価格の急騰を実感していない様子がうかがえた。ガソリンスタンドで出会った韓国人のソ・インソンさんは「この程度なら大きく上がったというほどでもなく、普段通り給油した」とし「ただ、日本のガソリン価格もリットル180円を記録したことがあるので、その水準まで上がるのではないかと心配している」と話した。
この日訪れたガソリンスタンドのガソリン価格は多くが150円台で推移していた。前週と比べて2~5円程度の上昇にとどまっている。ガソリンスタンド価格情報プラットフォーム「ゴーゴージーエス」によると、この日の東京都全体のレギュラーガソリン平均価格はリットル156.4円で、前週より3.3円上昇した程度だったという。

価格が比較的安定している背景として、いくつかの構造的要因が挙げられる。まず、日本の大規模な石油備蓄体制だ。1970年代のオイルショック以降、政府は石油備蓄制度を整備してきた。現在は政府備蓄と民間在庫を合わせ、国内消費ベースで約254日分の石油備蓄を確保している。市場不安による急激な価格上昇を緩和する役割を果たしているとみられている。
政府も物価高対策の一環として、原油価格の管理に積極的に取り組んできた。昨年末にはガソリンに課されていた暫定税率を廃止して税負担を軽減し、石油元売り会社への補助金支援などを通じて価格上昇を抑えてきた。さらに、人件費削減のため無人ガソリンスタンドが有人店舗より多い点や、ポイント還元やカード割引などを通じた業者間の競争構造も急騰を防ぐ要因として挙げられる。
ただし、事態が長期化すれば現在の安定も揺らぐ可能性があるとの懸念が出ている。資源エネルギー庁が4日に発表したレギュラーガソリンの小売価格は、前週より1.4円上昇しリットル158.5円と、約3か月ぶりの高水準となった。来週から10円以上の値上げを予告するガソリンスタンドも出ており、原油価格の上昇分が近く消費者価格に反映される可能性がある。
世田谷区に住む20代の猪股修平さんは「数円の上昇でも車をよく使うので、中東のニュースがどうしても気になる」とし「車を使わなくても地下鉄やバスなど公共交通の運賃にも結局影響が出るのではないか」と話した。
中東産天然ガスなど他のエネルギー供給への不安も出始めている。70代のタクシー運転手、山崎隆夫さんは「ニュースで言われているほどガソリン価格が大きく上がったという実感はまだない」としながらも「タクシーの多くはLPG車なので、むしろイランの問題でガス価格が影響を受けないか心配だ」と語った。
政府は対策の検討を急いでいる。備蓄石油の放出も検討しているとされる。高市早苗首相は前日、衆議院予算委員会で「国民が負担できない水準まで価格が上昇しないよう、電気やガス料金を含めた対策を検討している」と述べ、予備費を活用して財源を確保する考えを示した。
















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