
新型コロナウイルスのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻で打撃を受けた欧州経済が、イラン戦争による原油高で一段と厳しい影響を受ける見通しだと米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が16日(現地時間)に報じた。
WSJは、長期的な停滞により有権者の不満が高まっていた欧州が今年は回復と成長を期待していたものの、イラン戦争によって大きな逆風に直面したと伝えた。
今回の状況は4年前のロシアによるウクライナ侵攻時よりも厳しいとみられている。当時は政府債務や借入コストが比較的低く、家計や企業にはパンデミック対策の支援資金が残っていた。
しかし現在は、ほぼすべての欧州各国で政府の借入コストが急上昇しており、英国とフランスの政府債務は60年ぶりに国内総生産(GDP)比で最高水準に達している。
フランス銀行のフランソワ・ビルロワ・ド・ガロー総裁は12日、RTLのインタビューで「もはや資金の余裕はない」と述べた。
エネルギー価格の上昇により、化学企業などエネルギー多消費産業が工場閉鎖や中国・米国への移転を進め、脱工業化が加速するリスクも指摘されている。
欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は12日、イラン戦争発生後の最初の10日間で原油価格の上昇により、欧州が化石燃料輸入に追加で30億ユーロ(約5,493億2,000万円)を負担したと明らかにした。
ドイツの農機大手CLAASのヤン・ヘンドリック・モアCEOは、軽油や肥料など農業投入コストの上昇によって農家が大きな打撃を受け、食料価格の上昇につながる恐れがあると懸念を示した。
ドイツ東部の化学メーカーSKWピーステリッツは肥料原料である天然ガス価格の急騰に直面している。マルクス・ボッシュ広報担当は原材料価格の上昇分を顧客に転嫁せざるを得ないとの見方を示した。
このように物価上昇圧力が広がる中、チョコレートメーカーから自動車メーカーに至るまで、企業が業績見通しを引き下げる動きが出ている。
天然資源に乏しい欧州経済は貿易依存度が高く、EU全体の経済に占める割合はほぼ半分に達する。これに対して中国は約35%、米国は約25%とされる。
キャピタル・エコノミクスの首席エコノミスト、ニール・シアリング氏は、原油価格が1バレル当たり125ドル(約2万円)を超えれば欧州は景気後退に陥ると指摘した。
ゴールドマン・サックスの分析では、食料とエネルギーを純輸入する英国が最も大きな打撃を受ける見通しだ。
イングランド銀行は金利を下げる見込みだったが、原油価格の上昇により今年はむしろ金利を上げる可能性が約3分の2に達すると予想されている。
ゴールドマン・サックスによると、原油価格が平均1バレル当たり77ドル(約1万2,000円)で推移するシナリオでも、英国の成長率はイラン戦争前の1.5%から1%に低下する見通しだという。
ドイツの政府系金融機関KfW銀行の首席エコノミスト、ディルク・シューマッハー氏は、ホルムズ海峡が3か月間封鎖され原油価格が1バレル当たり120ドル(約1万9,000円)から150ドル(約2万4,000円)で推移した場合、来年のドイツのGDPは約0.5ポイント押し下げられる可能性があると指摘した。
経済協力開発機構(OECD)によると、ロシアのウクライナ侵攻後、フランスは2022年から2023年にかけて約1,050億ユーロ(約19兆2,000億円)規模のエネルギー支援策を講じていた。
しかし、昨年第2四半期時点で公的債務が約3兆4,800億ユーロ(約637兆3,000億円)に達し、財政赤字がGDP比5.4%に上る中、追加の大規模支援は困難とみられている。
このため欧州各国は高騰する原油価格への対応として、大規模な財政支出を伴わない政策を中心に打ち出している。
ドイツのカタリーナ・ライヘ経済相は、ガソリンスタンドが1日に複数回価格を変更することを禁止する案を提案したほか、各国は先週、石油備蓄の放出で合意した。
フランスもガソリンスタンドの不当な価格引き上げの監視を強化しており、消費者支援の余力が限られている現状が浮き彫りとなっている。
一方で、原油価格の上昇を受けてEUの炭素価格制度の一時停止や見直しを求める声も強まっている。
















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