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「そのうち撃ち落とせなくなる」迎撃ミサイル枯渇が意味する最悪のシナリオ

荒巻俊 アクセス  

イスラエル・湾岸諸国の防空網、被害抑制も…迎撃ミサイル不足が深刻化

引用:フランケンブルク・テクノロジーズ
引用:フランケンブルク・テクノロジーズ

イランによる大規模なミサイル・ドローン攻撃にも中東の主要都市は防空網で被害を最小限に抑えてきたが、その代償として迎撃ミサイルの在庫が急速に減っていることが明らかになった。戦争が長期化する場合、米国や同盟国全体の防衛能力が低下しかねないとの懸念も強まっている。

5日(現地時間)米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、アラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国はイランの集中攻撃の中でも主要都市の防衛に成功したという。

UAE国防省によると、戦争勃発後にイランは巡航ミサイル23発、弾道ミサイル498発、ドローン2,141機を発射したが、アブダビやドバイなどの主要都市は大半が直撃を免れ、人的被害も限定的だったとのことだ。

こうした成果を支えたのはパトリオット、THAAD(高高度防衛ミサイル)、艦載型のスタンダード・ミサイルなどによる多層防空網だ。これらのシステムは高速で飛来する目標を探知して空中で迎撃し、都市部の被害を大きく抑えた。

しかし、防御成功の裏には迅速な「弾薬の消耗」という構造的な問題が浮かび上がっているとNYTは伝えた。

軍事教義上、ミサイル1発を確実に撃墜するために迎撃弾を2発撃ち、そのうえで結果を確認する「発射・発射・確認」の原則が取られるため、防御側の弾薬庫は攻撃側よりはるかに早いペースで減っていく。

そこに低コストのドローンが大量投入されることで、高価な迎撃ミサイルを消耗させる非対称の消耗戦の様相が顕著になっている。

ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)でミサイル防衛プロジェクトを率いるトム・カラコ氏はNYTに対し「紛争初期の段階から在庫の空白はあった。ここ1カ月でその差はさらに広がった」と語った。CSISは昨年末の時点で迎撃ミサイル在庫の減少に警鐘を鳴らしていた。

実際、湾岸地域では在庫枯渇の兆候が具体的に表れ始めている。ユダヤ人国家安全保障研究所(JINSA)によると、UAEとバーレーンは主力戦力であるパトリオットPAC-3迎撃ミサイルの75%以上を消費した可能性があるという。各国は在庫を軍事機密として扱っているため、正確な数字は公表されていないが、防空網の維持負担が増しているとの見方が強い。

イランは長期戦を見据えて攻勢を続ける構えを鮮明にしている。イスラム革命防衛隊は声明で、戦略ミサイルの生産施設と長距離ドローン戦力は維持されていると主張し、攻撃能力は低下していないと強調した。

戦争初期には米軍基地のレーダーや通信網を狙った攻撃も並行して行い、防空システムの無力化を図ったとされる。

しかし、防空網も万能ではない。最近では、一部の弾道ミサイルがイスラエルの防空網を突破して核研究施設の近くまで到達した事例も報告され、多層防衛システムの限界も明らかになった。迎撃時に生じる破片の落下による二次被害も現実的なリスクとして指摘されている。

問題は、こうした事態が特定地域に限られないことだ。迎撃ミサイル不足は世界的な課題として浮上している。

ウクライナ戦争の長期化で防空システム需要が急増したのに続き、中東でも大量消耗が起き、世界の供給網全体に圧力がかかっている。日本、韓国、台湾などアジア各国や欧州でも潜在的な脅威に備えて迎撃能力の確保競争が進んでいる。

米国は同盟国防衛のため中核的な供給役を担っているが、生産速度は需要に追いついていない。

ドナルド・トランプ米大統領は防衛産業各社に増産を促して供給網の正常化を進めており、ロッキード・マーティンはPAC-3迎撃弾の年間生産を600基から2,000基へ引き上げる計画を明らかにした。

韓国の防衛産業も代替供給源として注目されている。UAEに配備された韓国製防空システムは最近の実戦でミサイルとドローン30発のうち29発を迎撃したとされる。ただし、専門家の間では高性能の迎撃システムは受注生産の部品や複雑な試験工程を必要とするため、短期間で大幅な増産を進めるには構造的な限界があるとの指摘が出ている。

イスラエル出身のミサイル防衛研究者タル・インバル氏は「THAADやアロー3のような迎撃ミサイルは受注生産の部品と複雑な試験工程を必要とする。単純な弾薬のように短期間で大量生産できる兵器ではない」と述べた。

荒巻俊
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