
米国のドナルド・トランプ大統領の側近で極右思想家として知られるスティーブン・バノン氏は、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル氏を「トランプ大統領に先駆けた存在」と評したことがある。
オルバーン氏は、トランプ大統領の政策の柱である反移民や反多様性をいち早く実行に移した人物で、トランプ大統領とも緊密な関係を築いてきた。実際、12日の総選挙を前に、米国のJ・D・ヴァンス副大統領が現地入りして選挙支援に乗り出したが、民意を覆すことはできなかった。
オルバーン氏は同選挙で敗北し、16年に及ぶ長期政権に終止符を打った。AP通信は、この結果がトランプ大統領や米国の保守層にも波及する可能性があると分析している。
トランプ大統領をはじめ多くの米保守派は、長年にわたりオルバーン氏を支持してきた。反移民政策などを掲げるその政治手法が、世界の右派陣営における象徴的存在とみなされてきたためだ。
またAP通信は13日、トランプ大統領の政策路線が、オルバーン氏が政府権力を活用してメディアや司法、選挙制度に影響力を及ぼしながら長期政権を維持してきた手法と、驚くほど類似していると指摘した。
オルバーン氏の再選を支持していたトランプ大統領は、イラン戦争をめぐる交渉対応が求められていたヴァンス副大統領をブダペストに派遣し、オルバーン氏の支持を呼びかける遊説を実施させた。
さらに、応援演説の最中にトランプ大統領とヴァンス副大統領が電話で会話し、オルバーン氏への支持を表明する場面もあった。民主国家の選挙では異例の出来事と受け止められている。
それにもかかわらず、選挙では2024年に発足した新興政党「ティサ(尊重と自由)」が全199議席中138議席を獲得し、与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は55議席、極右政党「私たちの祖国」は6議席にとどまった。
オルバーン氏の敗北は、イラン戦争への対応に追われる中で、トランプ大統領が海外の同盟国政治に影響力を及ぼす余力が弱まっている可能性を示している。
またAP通信は、トランプ大統領と類似したイデオロギーを持つ現職指導者にとっても、自らの権力を用いて有権者の支持を有利に導く力には限界があることを改めて示したと指摘した。
米ハーバード大学の政治学教授で、『民主主義の死に方』の共著者でもあるスティーブン・レビツキー氏は、「不公正な競争環境であっても野党が勝利することはあり得る」としたうえで、「多くの民主主義国家がさまざまな課題に直面しているが、それは権威主義国家も同様だ」と述べた。
オルバーン氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に最も近い欧州の指導者の一人であり、欧州連合(EU)のウクライナ支援に否定的な立場を取ってきた。そのため、今回の敗北はウクライナ戦争の行方にも影響を及ぼす可能性がある。
オルバーン氏の敗北は、米国内でも直ちに波紋を広げた。
ドン・ベーコン下院議員(共和・ネブラスカ州)は、「X(旧ツイッター)」に「他国の民主的な選挙に干渉すべきではない」と投稿し、ロジャー・ウィッカー上院議員(共和・ミシシッピ州)も、「自由を愛するハンガリー国民が民主主義と法の支配を支持する決定的な一票を投じた」と評価した。
また、米国保守連合のマット・シュラップ会長はオルバーン氏を支持する立場にありながら、「結局のところ、民主主義は変化を求めるものだ。民主主義に王は存在せず、最終的には国民が声を上げる」と述べた。
ロー・カンナ下院議員(民主・カリフォルニア州)は、ヴァンス副大統領に対し、「あなたの同盟者であるオルバーン氏は敗北を認めた。2028年にあなたが敗れた場合も同じ対応を取るのか」と「X(旧ツイッター)」に投稿した。
レビツキー氏は、「民主主義の擁護者が今回の結果に過度に安堵すべきではない」と指摘したうえで、「トランプ大統領はある意味でより抑圧的だった」と述べた。さらに、トランプ大統領が司法省を通じて政治的対立勢力を調査した事例や、移民当局がデモ参加者に発砲したケースに言及し、オルバーン政権はそのような措置を取っていなかったと強調した。
さらに、クリス・ヴァン・ホーレン上院議員(民主・メリーランド州)は、今回の選挙がトランプ大統領とオルバーン氏の政党の行方に共通点を示していると指摘。「本質的に、トランプ大統領が米国で進めようとしていることと同様のことをオルバーン氏は行ってきた。今回の結果は、ハンガリー国民がそうした動きを拒否したことを意味し、米国でも同様の判断が下される可能性がある」と述べた。
一方、トランプ大統領は12日、ハンガリー総選挙の結果について公のコメントを出していない。
















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