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「原発」がアジアの切り札に…中東危機で広がる“エネルギー不安”

梶原圭介 アクセス  

引用:Shutterstock*この画像は記事の内容と一切関係ありません
引用:Shutterstock*この画像は記事の内容と一切関係ありません

閉鎖されたホルムズ海峡が、アジア全域に大きなエネルギーショックをもたらした。昨年、この海峡を通過した石油とガスのうち、約90%はアジア向けだった。しかし、航路が2か月近く閉ざされたことで、アジア各国の政策当局は今、エネルギー戦略の練り直しを迫られている。

多くの国が出した答えは石炭だ。フィリピンや日本、タイ、韓国などは、原油価格や天然ガス市場の変動が大きくなる中、電力供給を安定させる当面の手段として石炭の使用を増やしている。インドネシアのような石炭輸出国も、中東情勢の緊迫による価格高騰に備えて在庫を積み増している。

排出削減目標の達成にも苦慮してきた地域であることを踏まえると、これは後退のようにも映る。ただし、今は石炭が紙面をにぎわせているものの、アジアのエネルギーの未来を左右するのは、結局、原子力発電である。電力を安定的に供給できる燃料は、事実上、原発しかないからだ。

石炭への回帰は、エネルギー安全保障上の懸念に基づく短期的な対応にすぎない。アジアは依然として化石燃料への依存度が高い。発電や送配電、金融の仕組みに至るまで、石炭、石油、ガスを軸に組み立てられているのが現状だ。こうした燃料からの転換は、投資サイクルや代替設備の整備にかかる時間に左右されざるを得ない。

ただ、石炭使用の急増が長期にわたって続く公算は小さい。各国政府は、化石燃料への依存そのものが戦略的な弱点であると認識している。今は石炭が手軽な緩衝材となり得るが、イラン戦争がクリーンエネルギーへの移行を押しとどめることはないだろう。長期的に見れば、イラン戦争はむしろアジアのエネルギーミックスを多様化させる流れを後押しする可能性が高い。今回の衝突は、各国政府がなぜ化石燃料を減らそうとしているのかをより鮮明に映し出している。それは排出を減らすためだけではなく、変動の大きいエネルギー市場へのリスクを抑えるためでもある。

再生可能エネルギーだけでは不十分

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、今後もアジアで有力な選択肢であり続けるだろう。しかし、これらのエネルギー源だけでは、ベースロード(基底負荷)を担う化石燃料発電を代替することは難しい。

その点、原発はそれが可能だ。エネルギー政策の立案者や計画担当者は、原発が輸入に頼る化石燃料に比べて安定的かつ低炭素であり、国内でコントロールできるエネルギー源であることを、徐々に明確に認識しつつある。

ホルムズ海峡の閉鎖は、化石燃料の供給ショックに備える防波堤としての原発の必要性を一段と高めている。中東情勢の不安定さによるアジアへの影響を抑えられるためだ。

もちろん、原発を含むクリーンエネルギーの拡大は、言うほど簡単ではない。特に、制度面の能力や資金、技術的な専門性が不足する発展途上国では一層難しい。クリーンエネルギーは初期投資が大きく、建設にも時間がかかるうえ、規制や安全をめぐる課題も伴う。政府が計画を進めるには、持続的な政治的意志が欠かせない。

クリーンエネルギー計画を実行に移すには、政府は多層的な戦略を取る必要がある。他国との連携強化、電力網の近代化に向けた投資、長期投資を呼び込める安定した政策の枠組みを構築しなければならない。

東南アジアでは、どのような構図が考えられるだろうか。ASEANパワーグリッドのような事業を通じて国境をまたぐ電力取引を広げれば、原発や再生可能エネルギーの発電所が一国にとどまらず、複数の国へ電力を供給できるようになる。金融調達の仕組みが改善されれば、大規模なエネルギープロジェクトのリスクを下げることにもつながる。

特に原発に関しては、政府が国際基準に沿って許認可や検査、法規制の執行を担える、独立性と十分な人員・予算を備えた原子力規制の体制を整備する必要がある。原発の運用経験が豊富な国々と連携し、人材育成にも投資すべきだ。

この地域では依然として原発の安全性に対する懸念が大きいため、この点は重要だ。原発を受け入れようとする政府にとって、国民の同意は欠かせない。政府は、原発がエネルギー安全保障の観点から安全かつ必要な選択肢であることを、国民に納得してもらわなければならない。そうでなければ支持を失い、後に政策が覆される恐れがある。ドイツがその例だ。

イランをめぐる衝突は、短期的には石炭をはじめとする化石燃料への回帰を招いた。しかし、だからといって東アジアの長期的なクリーンエネルギー転換が頓挫する可能性は高くない。むしろ今回の事態は、より多様で強じんなエネルギーミックスを築く必要性を浮き彫りにしている。そしてその過程で、原発は今よりもはるかに中心的な役割を担うことになりそうだ。

*本稿は、シンガポール南洋理工大学ラジャラトナム国際研究院(RSIS)非伝統的安全保障研究センターの研究員、ジュリアス・セサール・トラハノ氏(Julius Cesar Trajano)の見解であり、フォーチュンの編集方針とは一致しない場合がある。トラハノ氏は東南アジアのクリーンエネルギー転換と原子力ガバナンスを研究している。

梶原圭介
//= the_author_meta('email'); ?>editor@kangnamtimes.com

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