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18億ドルの“政治基金”だけではなかった…トランプ氏、自身の税務調査まで“永久封印”か

望月博樹 アクセス  

トランプ氏の元個人弁護士が政府代表に…民主党・メディア「事実上のセルフ免責」と批判

ドナルド・トランプ米大統領が2020年大統領選の不正を主張した周辺人物らの訴訟費用として約18億ドル(約2,860億9,100万円)の基金を連邦政府と合意した後、米国内国歳入庁(IRS)はトランプ一族と関連企業に対する「疑わしい」税務申告について、税務調査を恒久的に禁止・排除する方針を決めたことが19日に明らかになった。

司法省は前日、バイデン政権が政府機関を「武器」として使用し、トランプ大統領や保守派を政治的標的にしたとして、17億7600万ドル(約2,756億8,000万円)の「反武器化ファンド」を設立することでトランプ大統領側と合意したと発表した。しかし、この合意文書に付随する「トランプ税務調査永久排除」に関する附属文書は、司法省のウェブサイトに静かに掲載された。17億7600万ドル(約2,756億8,000万円)は米国の独立年を象徴する数字とされる。

政府の法律代理人である司法省がこの日、トランプ大統領関連の個人に対する「税務調査の永久禁止・排除」に関する合意文書を追加公開したことで、米メディアや民主党からは、連邦政府の長である大統領が自身と家族の「疑惑だらけ」の税務申告履歴に対する調査を「セルフ免除」したとして批判が強まった。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、「この附属文書の静かな掲載を通じて、トランプ大統領とその任命者たちは、依然として権力を完全に掌握している時点を利用し、外部監視を最小限に抑えながら、最大限の強硬措置を押し進める決意を示した」と評した。

元IRS長官のジョン・コスキネン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「トランプ大統領は友人や同盟勢力に配分する資金も得る一方で、すべての税務調査や監査からの免責も得た」と述べ、「彼らがどこまで好き勝手できるのか、もはや限界がない」と批判した。

2020年に暴露されたトランプ大統領の「18年間のうち11年は連邦所得税ゼロ」

2020年、億万長者であるトランプ大統領が、それまでの18年間のうち11年間で連邦所得税を一切納めていなかったとする税務資料がメディアに流出した。連邦所得税は日本の所得税に近い制度である。また、2017年の大統領就任後に支払った連邦所得税も750ドル(約11万6,000円)にとどまったとされる。なお、トランプ大統領は州税にあたる地方税は納めていた。

結果として、2017〜2020年に資産が約35億ドル(約5,562億7,400万円)規模だったトランプ大統領の「連邦所得税ゼロ」という申告内容は、2020年米大統領選で大きな論争となった。

トランプ大統領は1970年代以降、米大統領候補の中で納税申告書(tax returns)を公開しなかった唯一の候補とされる。納税申告書は本来非公開情報だが、1970年・1971年にリチャード・ニクソン氏が副大統領時代に約20万ドル(約3,178万5,900円)の所得がありながら連邦所得税はわずか800ドル(約12万7,000円)程度しか納めていなかったことが明らかになり問題になった。その後、この問題を受けて、共和・民主両党の大統領候補が数年分の納税記録を公開することが慣例となった。当時ニクソン氏は後に一部の税務資料を公開し、「私は詐欺師ではない」と発言したことで知られている。

トランプ大統領は大統領在任中も自身の税務申告内容の公開を頑なに拒んでいたが、2020年大統領選を前に、IRSの契約職員を通じて、過去20年以上にわたる連邦所得税の記録が9月27日にNYTへ暴露された。ジョー・バイデン民主党候補との第1回テレビ討論会を2日後に控えたタイミングだった。

NYTは当時この資料を分析した結果、トランプ大統領が、調査対象となった18年間のうち11年間は連邦所得税を一切納めておらず、2016年と2017年にはそれぞれ750ドル(約11万6,000円)しか納めていなかったと報じた。

さらにトランプは18年間で当初9,500万ドル(約151億1,350万円)に相当する所得税を納付していたが、その後さまざまな名目で還付申請を行い、計7,290万ドル(約115億8,840万円)を回収したとされる。また巨額の資産を持ちながらも、ホテルやカジノ事業は20年間で数億ドル規模の損失を計上していたと報じられた。間もなく満期を迎えるトランプ大統領個人の負債も4億ドル(約635億8,540万円)を超えていた。

一方で同紙は、「トランプ大統領は同じ超富裕層上位0.001%が毎年支払う平均よりも4億ドル(約635億8,540万円)少ない連邦所得税しか納めていない」と指摘し、企業は損失を申告する一方で、通常は個人支出とみなされる住宅購入や航空機、テレビ出演時のヘアスタイル費用にあたる7万ドル(1,112万8,290円)まで事業経費として計上していたと分析した。例えば1996年にはニューヨーク郊外の高級住宅地に約81万平方メートルの邸宅を購入しながら、家族のみが使用するにもかかわらず個人住宅ではなく投資用不動産として分類していたとされる。バラク・オバマ氏やジョージ・W・ブッシュは在任中、毎年10万ドル(1,589万7,850円)以上の連邦所得税を納めていたと比較されている。

トランプ大統領は当時、この一連の主張を「フェイクニュース」だと反論し、自身がキリスト教徒であることを理由に弾圧を受けていると主張したうえで、「数百万ドルから数千万ドル規模の個人税を納めてきた」と述べた。しかしこれは州税・財産税・給与税などを指しており、当時も現在も論点となっていたのは連邦所得税の「0ドル」だった。

最終的にトランプ大統領の疑わしい税務申告はIRSの注目を集め、現在に至るまで調査が続いているとされる。

トランプ大統領の反撃…自らの政府を相手取った100億ドルの訴訟

トランプ大統領は個人の税務申告履歴が公開されたのは違法であり政府の過ちだとして、1月29日にIRSおよび監督機関である財務省を相手取り、100億ドル(約1兆5,890億円)の訴訟を起こした。大統領が自ら率いる政府機関を相手取って訴訟を起こす異例の事態となった。

その後、司法省と結んだ17億7600万ドル(約2,823億2,900万円)の「反武器化ファンド」合意は、この訴訟の取り下げと引き換えのものだった。

この基金は当然ながら税金で賄われ、資金の恩恵を受ける対象には、大統領選の不正を主張し2021年1月6日に米議会に乱入した人々や、トランプ氏の側近、弁護士で元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏、さらに第1期トランプ政権でホワイトハウス上級顧問を務めたスティーブ・バノン氏などの名前が挙げられている。

米司法長官代行(司法副長官)のトッド・ブランチ氏は、「トランプ大統領は今回の合意でいかなる直接的な金銭支払いも受けていない」と強調した。

ブランチ氏は2024年大統領選直前まで、トランプ大統領がポルノ女優との関係をめぐる口止め料事件、退任後にマー・ア・ラーゴの私邸へ連邦機密文書を持ち出した事件、連邦選挙介入疑惑など複数の刑事事件に関与した際、法廷で常に弁護側として寄り添っていた元個人弁護士でもある。

引用:記事の内容と関連しAIツールで作成されたイメージ
引用:記事の内容と関連しAIツールで作成されたイメージ

この個人弁護士は、トランプ大統領が米連邦政府に対して起こした100億ドル(約1兆5,890億円)の訴訟において政府側の法務代理人である司法長官代行となり、さらに約18億ドル(約2,861億1,090万円)のトランプ大統領支持勢力に対する法的支援費用を確保しつつ、IRSによる税務調査まで「永久に禁止」する合意に関与したことについて、米メディアの反応は冷ややかだ。

トランプ大統領個人が18億ドル(約2,861億1,090万円)の反政治化ファンド設立の合意によって直接的な利益を得るわけではないという主張についても、米メディアは必ずしも同意していない。

もっとも、「疑わしい」という指摘だけでトランプ大統領の脱税が立証されたわけではない。多くの税務・法律専門家はこれまで米メディアに対し、「極めて攻撃的な節税手法」「個人企業がこれほど長期間にわたり大きな損失を計上するのは極めて異例」「そこまで攻めた事例は見たことがない」といった見解を示している。

そのためIRSはこれまで調査を続けてきたが、それ自体が今回の合意によって永久に禁止された形となる。米国では、特定の個人や企業がすでに提出した税務申告に対するIRSの調査を事前に永久に放棄する合意は前例がないとされる。WSJは、IRSによる税務調査の「永久禁止」措置だけでも、トランプ大統領が相当な財政的利益を得る可能性があると分析している。

また米政府はこれまで類似事案において、契約職員や外部委託者の不正行為や個人の逸脱行為について国家が無限責任を負うものではないとし、政府には免責があるためこの種の損害賠償訴訟の対象にはならないという立場を取ってきた。しかし今回は、トランプ大統領の元個人弁護士であるブランチ氏はそのような反論を明確には行わなかった。

米下院歳入委員会の民主党筆頭理事であるリチャード・ニール議員はこの合意の付属文書について、「大統領の個人弁護士と司法省が一体となって動き、トランプ大統領は自らの利益のために国民の資金を流用し、政府全体を私兵のように扱っている」と批判し、「我々の民主主義にとって極めて暗い日だ」と述べた。

望月博樹
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