
米連邦最高裁判所は、トランプ米政権に対し、人道的理由による一時保護資格(TPS)を得て米国に滞在しているハイチやシリア出身の移民数十万人を国外退去させる道を開く判断を示した。今回の判決は、TPS制度の下で米国に滞在する17か国・地域出身の約130万人に影響を及ぼす可能性がある。
連邦最高裁は25日(現地時間)、トランプ政権によるTPS終了措置は人種的偏見に基づくものだとするハイチ出身の移民側の主張を退け、TPS終了の決定について裁判所には審査する権限がないと判断した。判決は保守派の判事6人の賛成多数で言い渡され、リベラル派の判事3人は反対した。
TPSは、帰国した場合に武力紛争や自然災害、感染症の流行などの緊急事態によって生命や安全が脅かされる恐れがある特定の国・地域の出身者に対し、一時的な滞在資格と就労許可を付与する保護制度で、1990年に米議会で創設された。
ハイチは2010年のマグニチュード7.0の大地震を受け、TPSの対象国として初めて指定された。さらに、2021年に大統領が暗殺され、武装ギャングが事実上の支配を強めると、多くの人々が米国へ避難した。TPS制度の下で米国に滞在するハイチ出身者は現在、35万人を超える。
また、シリアのバッシャール・アル・アサド政権による弾圧や、その後の内戦を逃れてTPS制度を利用し米国に定住したシリア出身者は約6,000人と推計されている。TPSの申請には、犯罪歴の有無など厳格な身元審査を受ける必要がある。
トランプ政権はTPS制度について、保護期間の延長が繰り返された結果、事実上の移民制度の抜け道へと変質したとして昨年、制度の廃止を打ち出した。しかし、対象となる移民らが提訴し、連邦地裁が制度廃止の差し止めを命じたため、これまで実施は見送られてきた。
一方、TPSの終了に反発するハイチ出身者らは、ドナルド・トランプ米大統領が2024年大統領選挙期間中、オハイオ州スプリングフィールドに住むハイチ系住民について、「近隣住民のペットを捕まえて食べている」とする虚偽の主張を拡散したことを挙げ、今回の措置は人種的偏見に基づくものだと主張した。
しかし、保守派のサミュエル・アリト判事は、トランプ大統領の発言が人種差別的だったことは認めつつも、「それだけでTPS終了政策が人種的動機に基づくものだと結論付けるには根拠が不十分だ」と述べた。その上で、国土安全保障長官がどの国をTPSの対象国に指定するか、あるいは対象から除外するかについては、司法審査の対象にはならないとの判断を示した。
一方、リベラル派のエレナ・ケーガン判事は反対意見で、「こうした発言は、暗黙であれ公然であれ、強い人種的偏見を示すものであり、ハイチ人を米国から追放するという大統領の決定に人種的要素が影響したことを強く示している」と指摘した。
今回の判決により、トランプ政権はハイチやシリアに加え、アフガニスタン、南スーダン、ベネズエラなどを対象とするTPS制度についても終了手続きを進めることが可能になる見通しだ。現在、TPS制度の下で米国に滞在する移民は約130万人に上るとされる。
また、連邦最高裁は同日、迫害を受ける恐れがあるとして米国への亡命を申請しようとする人々について、トランプ政権がメキシコとの国境地帯から入国する前にメキシコ側へ送り返すことを認める判断も示した。
米国では当初、亡命希望者が国境地帯に到達すれば亡命を申請し、保護を求めることが認められていた。しかし、移民の流入が急増したことを受け、バラク・オバマ政権時代に一定の制限が設けられた。トランプ大統領は第1期目の政権でこの制限を大幅に強化したものの、その後発足したジョー・バイデン政権は、亡命希望者をメキシコ側へ送り返す措置を廃止した。トランプ政権は、この措置の復活を目指している。
今回の判決も、保守派の判事6人が賛成し、リベラル派の判事3人が反対する構図となった。保守派の判事らは、米国で亡命申請を行うには、国境を越えて実際に米国領内に入っていなければならないとの判断を示した。
ホワイトハウスは今回の最高裁判決を歓迎した。ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は「大きな勝利だ」と評価したうえで、「トランプ政権は、長年にわたり米国の移民制度が悪用されてきた状況に、法に基づいて終止符を打とうとしている」と述べた。
一方、米下院のハイチ・コーカス共同議長を務めるアヤンナ・プレスリー下院議員(民主党、マサチューセッツ州)は、「今回の判決がもたらす影響は壊滅的なものになるだろう」と懸念を示した。「TPSが終了すれば、雇用主は従業員を失い、最終的には都市部、農村部、郊外を問わず地域経済に悪影響を及ぼすだろう」と指摘した。
また、民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「残酷で非人道的な決定だ」と批判したうえで、「TPSは、安全に帰国できない人々を保護するための制度だ。トランプ政権と最高裁は、残酷さと混乱、そして恐怖を選んだ」と非難した。
















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