
終戦合意は実現したものの対立は終わっていない。米国とイランの新たな火種となっているのが世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡だ。先週、両国は一般商船の航行を巡って対立した。イランは核開発で一定の譲歩を余儀なくされたとしても、ホルムズ海峡の統制権だけは維持し、米国を牽制するための戦略的な交渉カードとして活用したい考えだ。一方、米国は国際水路における航行の自由は譲れないとの立場を崩していない。
停戦後初の対立、ホルムズ海峡を巡り緊張
イランのアッバス・アラグチ外相は28日(現地時間)、イランがホルムズ海峡の管轄権を単独で有すると主張した。イラン国営メディアによると「ホルムズ海峡の海上交通の管理と完全な正常化はイランの責任であり、この問題について他国やいかなる組織にも責任や権限はない」と述べたという。
米国とイランは先週、ホルムズ海峡を巡って軍事衝突に発展した。イランはオマーン沿岸を航行していた船舶を攻撃し、これに対し米国はイランの軍事施設を空爆した。
今回の衝突はある程度予想されていた展開でもあった。オマーンと国際海事機関がオマーン領海のみを通過する新たな航路を設定したことで、ホルムズ海峡を自国が実質的に管理するというイランの構想が揺らぐ可能性が生じたためだ。イランは商船に対し、自国沿岸に設定した航路の利用を求めてきた。一方、米国はオマーン経由の新航路を支持しており、イランはその利用に対して事前に警告していたとされる。
その後、双方は追加攻撃を見送り、首脳会談の開催に向けて調整を進めることで一致したと伝えられている。米ニュースサイトのアクシオスは、会談が早ければ30日にも開かれ、最近再び焦点となっているホルムズ海峡問題が主要議題になる可能性が高いと報じた。
イランにとって「核」以上に重要なカード
イランがホルムズ海峡の統制権強化にこだわる背景には、米国との交渉で最後の戦略的カードを失いたくないという思惑があるとみられる。核開発を巡る協議が進展すれば高濃縮ウランの備蓄を引き渡す、あるいは希釈する形で核抑止力の一部を放棄する可能性がある。その場合、ホルムズ海峡は核抑止力に代わる唯一の戦略カードとなる。
ホルムズ海峡は世界の原油輸送を支える重要な海上ルートだ。イランがこの海峡に影響力を持ち続ける限り、交渉では制裁緩和や凍結資産の解除を求める材料となり、交渉が決裂した場合には世界のエネルギー市場に打撃を与える手段にもなり得る。イランにとってホルムズ海峡は和平交渉の局面でも、再び軍事衝突が起きた場合でも手放せない戦略資産となっている。
専門家はオマーン領海を通る新航路に対するイランの強い反発も、こうした事情と無関係ではないと分析する。イランは核交渉が決着する前にホルムズ海峡への影響力が弱まれば、米国から譲歩を引き出す余地が狭まるとの判断があるためだ。国際危機グループ(ICG)のイラン担当シニアアナリスト、アリ・バエズ氏はニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し「最善のシナリオであれ最悪のシナリオであれ、イランにはこの交渉カードが必要だ。最終合意に至る前にこのカードが弱まることをイランが受け入れる可能性は極めて低い」との見方を示した。













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