
中国陸軍第72師団所属の「黄草嶺英雄連隊」のヘリコプターが仮想の海岸防衛陣地に到着すると、数十人の兵士が「狼型ロボット」の援護を受けながら一斉に展開した。
国有防衛産業企業『中国兵器装備集団』が開発した軍用四足歩行の「狼型ロボット」は、5基の熱画像カメラやLiDAR(ライダー)、各種センサーを搭載し、周囲の地形を360度精密にスキャンする。人間が立ち入りにくい地域でも、偵察や標的攻撃の任務を効率的に遂行可能だという。
自律制御が可能な中国製チップを採用し、最大40度の急斜面を登り、30センチの障害物を乗り越えることができる。最大20キログラムの物資を運搬でき、走行距離は約10キロ、稼働時間は約2時間半に上るという。
約10メートル前方で「狼型ロボット」が先に障害物を越えたり、危険地帯を確認すると、兵士たちはその後に続いた。
指揮官が「山の裏手の道路入口を封鎖し、敵の増援を断て」と新たな命令を下すと、「狼型ロボット」は再び先頭に立って目標地点へと突進した。
その後、「狼型ロボット」が爆破されたとの報告に接した指揮官は、後方の歩兵部隊に重火器を総動員して前線の敵陣を攻撃するよう指示した。

ドローンが変える戦争の形 『中国中央テレビ(CCTV)』がこのほど公開した映像では、中国軍が台湾上陸訓練に初めて大量の「狼型ロボット」を投入した様子が映し出された。中国の狼型ロボットは、昨年11月の中国国際航空宇宙博覧会で初公開され、先月北京で行われた「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念パレード」では、無人戦車や自律走行ドローンとともに陸上作戦部隊の「無人3種セット」として紹介された新兵器だ。
中国軍は毎年少なくとも1回、大規模な上陸作戦や海岸侵入型の訓練を実施している。今回CCTVが公開した台湾侵攻を想定した訓練では、AIを搭載した無人兵器が前面に登場し、訓練の様相が一変した。従来のの上陸作戦は、装甲車で海岸に到達した兵士が多大な犠牲を覚悟で直接突撃する戦術だったが、今では空と陸に無数のドローンを展開し、先制攻撃を仕掛ける戦術へと移行している。この日の訓練では、大型ドローンが海岸から敵陣を爆撃し、自爆型の小型ドローンが車両や歩兵に追従して目標を正確に攻撃する様子が確認された。
2022年のロシア侵攻によって始まったウクライナ戦争は、ドローンの戦術的価値が実戦で実証された戦場として評価されている。台湾海峡で戦争が起きた場合、開戦当初からドローンが前面に登場する初の大規模戦争になるとの観測も出ている。 中国の軍事メディア『大伊萬(ダイワン)』は、「ウクライナで実戦投入され効果を上げた無人機作戦の経験を、中国軍が地上戦訓練にも応用し始めている」と報じ、「現時点では狼型ロボットは装甲歩兵の補助戦力にすぎないが、将来的に数百体が時速30~40キロで突進すれば、戦況は大きく変わるだろう」と伝えた。
米中、軍用ドローン競争が本格化 2022年、CIA(中央情報局)が中国による台湾侵攻の可能性を2027年と推定したのを受け、中国軍はドローンとアルゴリズムを中核とする新たな戦術体系の構築を急いでいる。先月、国有防衛産業企業『NORINCO』は、AIモデル「DeepSeek」を基盤に動作する軍用車両P60を公開した。時速50キロで走行可能なP60は、障害物の回避や標的の識別を自動で行い、補給などの支援任務をこなすことができる。
『ロイター』は「中国がAIを活用した戦争準備に拍車をかけている」と報じ、「ロボット犬(狼型ロボット)やドローン、戦争シミュレーションシステムなど、AIと連携する兵器プラットフォームの開発が活発化している」と伝えた。 今後、無人戦闘機器をめぐる米中の軍事競争がさらに激化するとの見方も出ている。米インド太平洋軍は、中国軍が台湾海峡で突発的な攻撃を仕掛けた場合、数千機のドローンや無人潜水艇・無人水上艇を投入し、中国軍の戦力を消耗させつつ米軍の増援時間を確保する「ヘルスケイプ(Hellscape)」戦略を策定している。
これに対抗し、中国はドローン対策を専門とする部隊の創設を進めているという。『ロイター』によると、中国は特に、ドローンが人間の介入なしに標的を自律的に認識・追跡し、編隊を運用できる技術の開発に力を入れているという。















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