メキシコの麻薬戦争の渦中で活動していた現職市長が行事の現場で公然と殺害される事件が発生した中、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は犯人の厳罰を約束しつつも、「過去の軍事化された『麻薬戦争』に絶対に回帰しない」との方針を明確にした。シェインバウム大統領はむしろ過去の「失敗した争い」が現在の暴力を引き起こしたとし、『弾丸ではなく抱擁』(Abrazos, no balazos)として知られる社会的アプローチを堅持する考えを明言した。
『AP通信』や『エル・ウニベルサル』などの現地メディアによると、ウルアパン市長のカルロス・アルベルト・マンソ・ロドリゲス氏は現地時間1日夜、『死者の日』(Día de Muertos)という祝日の行事が最高潮に達していた市内中心部の広場で銃撃により暗殺された。「死者の日」はメキシコでは最も重要で盛大な国民の祝日で、この世を去った家族や友人を偲んで祭りを催す日だ。このような公共行事の場で市長が殺害されたという事実は、メキシコ社会に大きな衝撃が広がった。マンソ市長は今年メキシコで殺害された7人目の市長となる。

無所属だった同氏は、麻薬カルテルの暴力性に屈せず声を上げてきた。特にこの地域はアボカドやライムなどの農産物の生産で有名で、カルテルが農民から『保護費』を搾取していることは公然の秘密だった。現地紙レフォルマによると、マンソ市長はここ数カ月、農民を搾取する犯罪組織を公然と非難し、連邦政府の積極的な介入と支援を求めてきた。
事件発生直後、シェインバウム大統領は3日に定例会見を開催し、「首謀者を含め、責任ある者たちを見つけ出して処罰する。責任を逃れることはできない」と強調した。
しかし、シェインバウム大統領は今回の事件を機に、強硬な鎮圧を要求する野党の声に対し明確に反対した。彼女は「麻薬戦争当時のように軍事化と対決を求める者たちがいる」とし、「その方式は効果がなかった。むしろ、それがミチョアカンでの暴力事態を招いた」と述べた。
さらに、シェインバウム大統領は野党に向けて「彼らには起きたことに対する共感さえない。この悲劇を政治的に利用しようとしている意図が明白だ」とし、「彼らはただ『強硬対応』政策のみを提案している」と批判した。
2006年、フェリペ・カルデロン前大統領は就任直後、麻薬カルテル掃討を名目に軍隊数万人と連邦警察をミチョアカン州に投入する『ミチョアカン作戦』を開始した。これは10年以上続いた軍事的掃討作戦の狼煙であった。
しかし、この戦略は『失敗』に終わったというのが大方の見方だ。政府がカルテルの首領を除去すると、組織は数十個に分裂した。これらは無主の公山となった麻薬密売ルートと事業を占有するため、激しい抗争を繰り広げた。その結果、2017年のメキシコの殺人率は人口10万人当たり25人にまで急増し、史上最悪の数値を記録した。
シェインバウム大統領の師であり前任者であるアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール前大統領は2018年、「弾丸ではなく抱擁」(Abrazos, no balazos)という正反対の政策を掲げた。カルテルとの正面衝突を避ける代わりに、貧困層の若者たちが犯罪に陥らないよう社会福祉、教育、雇用など「根本原因」の解決に集中するという方式だ。シェインバウム政権もこの基盤を継承している。
シェインバウム大統領は「我々は超法規的処刑や権威主義的抑圧ではなく、地域内の保安軍配置、厳正な捜査、公正な処罰といった現在の戦略を堅持する」とし、「社会正義から不処罰を防ぐ司法システムに至るまで、広範な正義が必要だ」と改めて強調した。
一方、市長殺害事件によりミチョアカン州は極度の混乱に陥った。一部の憤慨した住民たちは州政府庁舎に乱入し、備品を破壊して放火を試みた。彼らは激しいデモを行い、シェインバウム大統領と州知事の無能を糾弾している。













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