ドナルド・トランプ米大統領がイラン政府との協議を全面的に取りやめ、反政府デモ隊を公然と後押ししたことで、米国が「ポスト・ハメネイ」を見据えた布石を打ち始めたとの観測が広がっている。一方で、現時点では米国が直ちに具体的な行動に踏み切る段階ではない、との見方も根強い。
トランプ大統領は13日(現地時間)、SNS「トゥルース・ソーシャル」に、イランのデモ参加者に向けてデモ継続を促した上で、政府機関を占拠するよう呼びかけた。さらに、当局がデモ隊への無差別な殺害を止めるまで、イラン当局者との会合をすべて中止すると書き込み、「支援の手は向かっている」とも記した。

軍事オプションを巡っても、トランプ大統領は一段と強い調子を示している。CBSのインタビューでは、イラン政府がデモ隊を絞首刑に処すれば「極めて強力な措置を取る」と警告し、例としてニコラス・マドゥロ・ベネズエラ大統領の身柄拘束作戦や、昨年のイラン核施設への奇襲攻撃などに言及した。ロイター通信によれば、米軍最大級の中東拠点であるカタールのアル・ウデイド空軍基地に駐留する一部人員に対し、14日夕方までの撤収を勧告する通知が出たという。イランは昨年、米国による核施設攻撃への報復として同基地にミサイルを発射した経緯があり、今回の撤収勧告も、軍事介入後の反撃に備える動きとみる向きがある。
神権体制の崩壊後をにらんだ動きも浮上した。米政治専門メディアのアクシオスは、スティーブ・ウィトコフ米中東特使が先週末、米国に亡命中のパフラヴィー前皇太子(レザー・パフラヴィー氏)と非公開で接触し、デモ情勢や体制崩壊後の構想を話し合ったと報じた。パフラヴィー氏は体制移行期の指導者役を自任しており、ワシントンでも移行局面での暫定的な対話相手として名前が挙がっている。欧州側も対イラン圧力を強めており、EUは革命防衛隊(IRGC)をテロ組織に指定する案を検討している。英国も、イランの石油・エネルギー・核・金融分野の中核に関わる主体を制裁対象としてきた上で、追加の制裁措置を検討している。
ただ、イラン政権の崩壊が差し迫っているとの見方は限定的だ。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)のヴァリ・ナスル教授は、崩壊の「瞬間」はまだ来ていないとの認識を示し、実現にはデモの長期化に加えて、治安部隊を含む国家組織の一部が内部から離反する必要がある、との見通しを語った。
軍事介入そのものにも制約がある、との指摘が出ている。米政治専門メディアのポリティコは、中東周辺に米海軍の空母が展開していないことに触れつつ、かつて利用できた戦力の一部がカリブ海方面へ移り、過去に中東へ前方展開されていた主要防衛システムの一部は韓国へ戻ったとして、選択肢が狭まっていると分析した。米海軍の配備状況を追う公開情報でも、空母打撃群の配置は地域ごとに偏りがみられる。
また、外部からの攻撃は反米感情を刺激し、神権体制側の結束をかえって強めかねない、という懸念もくすぶっている。
一方、イラン国内の死傷者数を巡っては、複数の団体・メディアが大きく異なる数字を伝えている。米国に本部を置く人権活動家通信(HRANA)は、デモ開始から17日間で死者が2,571人に達したと発表した。ノルウェー拠点の団体イラン人権(IHR)は、デモ参加者の少なくとも734人が死亡したとした上で、未確認情報として最大6,000人に達する可能性にも触れている。英拠点の反体制メディア、イラン・インターナショナルは、1月8〜9日の2日間に少なくとも12,000人が死亡したとする情報筋の話を報じ、最高指導者アリ・ハメネイ師が直接、発砲命令を出したとも主張した。













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