
太平洋で軍事活動を強める中国を念頭に、政府が太平洋の島しょ部を対象とした防空識別圏(ADIZ)の拡大や、自衛隊の基地施設整備を進める方針だと朝日新聞が4日報じた。
防空識別圏は、航空上の脅威を早期に識別する目的で任意に設定する線で、国際法上の領空とは別物とされる。防空識別圏内に、領空侵犯の恐れがあると判断される航空機が入った場合、戦闘機などを緊急発進させて対応する運用が取られている。
現在の防空識別圏は、米軍が1950年代に設定した線を基準にしてきたとされ、本州南方の太平洋の島々にあたる小笠原諸島上空は当時、範囲に含まれていなかった。これを踏まえ、防衛省は小笠原諸島上空を防空識別圏へ編入する案を検討しているという。
同紙は、中国が太平洋で活動を活発化させる状況を踏まえ、自衛隊の監視態勢を強化する狙いがあると解説した。一方で、小笠原諸島上空を防空識別圏に組み込めば、中国との軍事的緊張が高まる可能性があるとも指摘している。
過去には、日本が2010年に沖縄県の与那国島周辺まで防空識別圏を拡張した際、台湾が遺憾の意を示した例がある。2013年には、中国が尖閣諸島(中国名・釣魚島)上空を含む東シナ海に防空識別圏を設定し、米国と日本が批判した経緯もあった。
小笠原諸島上空は他国の防空識別圏と重ならないため、周辺国の反発が大きくならないとの見方がある一方、防空識別圏の運用開始後に中国軍機の動きに応じた緊急発進が増えれば、日中対立が先鋭化しかねない。
朝日新聞は、防空識別圏を広げる場合、該当地域のレーダー整備や戦闘機の配備見直しが必要になるとも分析した。政府は当面、レーダー搭載の早期警戒管制機などで監視の空白を補う方針だという。
政府は別途、小笠原諸島にある硫黄島(いおうとう)で、滑走路や港湾の整備に向けた調査に着手し、警戒・監視体制を強める計画とされる。大型船舶が接岸できる桟橋の設置や、中国軍機への対応を念頭に自衛隊戦闘機を常時配備する案も議論の俎上にあるという。
防衛省は来月、「太平洋防衛構想室」を新設し、年内に改定される安全保障関連の3文書に「太平洋防衛の強化」を盛り込む予定だとされる。朝日新聞は、硫黄島の拠点強化を巡って、火山活動による工事上の制約に加え、太平洋戦争期の戦没者遺骨が残ることから、遺族の理解を得る調整も課題になると伝えた。













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