
地形構造、季節、一日の長さ(自転周期)など、地球に似た特徴を持つ火星。人類の地球外居住地として最有力視されるこの惑星で、生命の痕跡が発見され注目を集めている。
米航空宇宙局(NASA)は10日(現地時間)、ワシントンDCの本部で記者会見を開き、火星探査中の無人探査車「パーサヴィアランス」が採取した岩石から、潜在的な生命の痕跡(potential biosignatures)を発見したと発表した。生物起源と考えられる特定の化学物質が確認されたという。
問題の岩石は、パーサヴィアランスが昨年7月にドリルで採取した「サファイア・キャニオン(Sapphire Canyon)」である。直径1cm、高さ6cmのソーセージ状の形状をしている。サファイア・キャニオンは、火星のクレーター「ジェゼロ・クレーター」内部にある古代の谷「チェヤヴァ・フォールズ」で採取された。
ジェゼロ・クレーターは約3億年前に水が流れていた環境だったと推定される。水は生命の発生と繁栄の源であるため、今回の分析結果が生命の痕跡である可能性は一層高まっている。

サファイア・キャニオンは、黄土色と白い斑点が混ざり、ヒョウの皮を思わせる独特の模様が特徴である。研究チームによれば、これらの斑点は微生物が岩石内の有機炭素、硫黄、リンなどを栄養源として利用した際に残された痕跡の可能性があるという。
特に、岩石が採取された地層の堆積岩は粘土とシルトで構成されており、地球においても過去の微生物を保存する役割を果たしてきた。NASAのショーン・ダフィー暫定長官は「これまで火星で発見されたものの中で、生命に最も近い事例だ」と述べた。

しかし、火星に生命が存在したと断言するのは時期尚早である。NASAによれば、より確実な証拠を得るには岩石を地球に持ち帰り、詳細な分析を行う必要があるという。現在までに得られた分析結果は、パーサヴィアランスに搭載された機器で調査したデータを電波で受信したものに過ぎない。
米国はサファイア・キャニオンを含む火星の岩石を2030年代に地球に持ち帰る予定であったが、予算超過問題により回収作業が遅れ、2040年代に延期された。NASA惑星科学部のリンゼイ・ヘイズ主任科学者は記者会見で「今回の発見だけでは生命の有無について結論を出すには不十分であり、さらなるデータおよび追加研究が必要だ」と述べ、「最終的にはこのサンプルを地球に持ち帰って研究できることを願っている」と付け加えた。
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