
AI技術を活用して動物の発声パターンを分析し、その「意味」を解読しようとする研究が世界各地で進んでいる。専門家の間では、「人間と動物が言葉を交わす日が訪れるかもしれない」という期待が高まっている。
国際学術誌『ネイチャー』は10月7日、フランス・レンヌ第一大学のメリッサ・ベルテ教授率いる研究チームが、コンゴ民主共和国の熱帯雨林で6カ月にわたりボノボの群れを観察した成果を発表したと報じた。ボノボはチンパンジーに最も近い霊長類で、ヒトと約98.7%の遺伝子を共有する。
研究によると、ボノボは「これをしよう」という意味の鳴き声と「私を見て」という低い声を組み合わせ、「一緒にしよう」というメッセージを伝えるなど、少なくとも4種類の音声の組み合わせで意思を表現していたという。
こうした「音声の組み合わせ能力」は、チンパンジーやクジラなど他の動物にも確認されている。フランス・リヨン神経科学研究センターのチームは、野生のチンパンジーが「警告音」と「呼集音」を組み合わせて仲間に危険を知らせたり、「休息」と「遊び」を意味する音を組み合わせて群れで木に登り休む行動を取ることを観察した。日本のゴンジュルバギによる研究でも同様の現象が報告されている。
さらに、米国の「Project CETI(プロジェクト・セティ)」の研究チームは、マッコウクジラのクリック音(特有の音響信号)を長期間分析することによって、クジラがリズムや速度の違いを使い分け、「コーダ(coda)」と呼ばれる体系的な発声パターンで意思を伝えていることを突き止めた。また、AIを使ってこのクジラの発声体系を再現する実験も進められているという。
「地球種プロジェクト(Earth Species Project)」のデビッド・ロビンソン研究員は、「AIはこれまで不可能だった方法で動物のコミュニケーションを解析している」とし、「近い将来、人間と動物が実際に“会話”できるようになる可能性がある」と述べている。
ただし研究チームは、動物の発声には人間の言語に見られる「時制の移動」や「創造性」、「二重構造」などすべての特性が備わっているわけではないと強調している。ベルテ教授は「動物の発声を人間の定義する“言語”と呼べるかどうかはまだ不確かだが、AIの進化によって理解の壁は少しずつ低くなっている」と語り、「いつか人間と動物が互いの言葉を理解し合える時代が来るだろう」と展望を示した。
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