「20年の結婚生活」を終え新たな出発を夢見た男、2億円を失う…「ロマンス詐欺+暗号資産」の悲劇

離婚を前に人生の再出発を夢見ていた米国人男性が、恋愛詐欺(ロマンススキャム)に巻き込まれ、暗号資産に投資した末に生涯の貯蓄を失い、絶望に追い込まれた。
米コロラド州デンバー地域のメディアKDVRと9NEWSの報道によると、A氏(男性)は20年に及ぶ不和の続いた結婚生活に終止符を打とうとしていた。彼は既婚者向けの秘密の出会いを仲介するウェブサイトを通じて「エリン」という女と知り合った。
結婚生活の苦しい時期にあったA氏に、エリンは自分も同じような状況だと打ち明けた。
軽い会話から始まった二人は、次第にお互いの共通点を見出していった。A氏は「エリンは自分の写真はもちろん、住んでいる場所までリアルタイムのビデオ通話で見せてくれた」と語った。
A氏はエリンと実際に会う前から、すでに深い感情的な繋がりを感じていた。
会話が深まるにつれ、エリンは叔母と共に事業を経営し、ワイン農園や不動産も所有していると紹介。そして「ちなみに私は暗号資産にも投資しているのよ」と付け加えた。
エリンは投資に関する表やグラフ、さまざまな数値を送ってきた。A氏は暗号資産について詳しくなかったが、エリンの説明に説得されたと明かした。
A氏は「正直、エリンの美しい外見に魅了されたのは事実だ」と語りながらも、「それだけでなく、エリンが教えてくれた投資で金を稼げるかもしれないとも考えた。離婚和解で大金を失うかもしれない状況だったからね」と打ち明けた。
A氏はエリンに倣って暗号資産への投資を始めた。最初はビットコインに投資した。エリンの言う通り、A氏が投資したビットコインは毎日利益を生み出しているように見えた。A氏は6週間で4件の投資取引を行った。
A氏が投資した総額は140万ドル(約2億872万5,692円)だった。彼は生涯貯めた資金と退職金をすべて投資に注ぎ込んだ。
A氏が異常に気づいたのはその後だった。投資金と利益を現金化しようとしたが、不可能だった。代わりに「資金を引き出すには40万ドル(約5,963万5,912円)が追加で必要だ」というメールが届いた。
A氏は姉に電話して状況を説明し、姉は「すぐに当局に通報しなさい」と助言した。
事件はコロラド州捜査局(CBI)に引き継がれた。CBI経済犯罪捜査部の特別捜査官ゼブ・スミースターは「A氏は最初こそ合法的な暗号資産アプリを通じて送金していたが、その後は詐欺師たちが操る偽のアプリで送金していた」とし、「A氏の投資金はコールドストレージ、つまり凍結された暗号資産ウォレットに送られたようだ」と説明した。
スミースター捜査官は「コールドストレージは所有者が誰であるか、また識別情報も不明なため、まるで閉ざされた金庫のようなものだ」と述べ、「金庫の中身は分かるが、第三者がアクセスする方法はない」と付け加えた。
A氏は「私の問題は、欲望と孤独だった」と振り返り、「かなり深みに陥っていた」と後悔の念を示した。彼は匿名でこの事件に関するインタビューに応じ、警戒を呼びかけた。
スミースター捜査官は「金銭感覚に優れた人でもロマンス詐欺の犠牲になる可能性がある」とし、「詐欺師たちは架空の人物を作り上げたり、時には実在の人物を脅して協力させ、ビデオ通話に利用したりする」と述べた。
エリンについて、スミースター捜査官は「人身売買の被害者として強要されていた可能性もあれば、詐欺に関与していた可能性もある。しかし、彼女が詐欺の首謀者ではないことは明らかだ」と語った。
専門家たちは、会話が暗号化されたチャットアプリへ移行させられたり、法外な利益を約束されたり、合法的な金融プラットフォーム以外での資金移動が要求されたりする場合は、重大な警戒信号であると警告している。
スミースター捜査官は「相手が金銭を要求し始めたら非常に注意すべきだ」とし、「彼らの目的は、あなたから金を巻き上げることにある」と注意を促した。
写真はもちろん、ビデオ通話で映し出された海辺の風景に至るまで、すべてが現実のように見えるよう『演出』されており、手遅れになる前に警告サインに気づくのは容易ではない。
A氏は同様の被害に遭う可能性のある人々に「一歩引いて冷静に考えてください。そして、直接会ったことがないなら、慎重に調査し相手が本当に誰なのか確認してください」と警告した。
さらに「詐欺の被害に遭ったと思ったら、すぐに銀行と捜査機関に通報してください」と付け加えた。
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