
20代の女性が脳卒中で倒れた後、目を覚ますとそれまでのイギリス訛りが消え、なぜか「タイ訛り」で話すようになったとして話題になっている。
イギリス紙「メトロ」によると、キャシー・ウォーレンさん(29)は昨年9月、友人たちとトルコ旅行中に突然めまいを訴え、足に力が入らなくなってその場に倒れた。
病院に搬送された彼女は精密検査の結果、脳卒中と診断された。しかし翌日、目を覚ましたウォーレンさんは左半身が麻痺した状態で、これまでのハンプシャー訛りの英語が消え、タイ訛りで話し始めたという。
「イギリス式の発音で話していた自分が、突然まったく別人になったように感じた」とウォーレンさんは語る。
医師らは「母親がタイ出身で、その影響を受けたのではないか」と推測したが、明確な理由は説明できなかったという。
ウォーレンさんはトルコの病院で1か月治療を受けた後、イギリスに戻り、およそ1年にわたってリハビリと音声療法を続けたものの、訛りは元に戻らなかった。
最終的に「外国語様アクセント症候群(Foreign Accent Syndrome)」と診断された。この症状は、脳の損傷などによって発話のリズムや抑揚が変化し、まるで別の言語圏の人のような話し方に聞こえるというものだ。改善する場合もあるが、一生続くケースもある。
外傷性脳損傷後に発症するまれな疾患 言語・心理治療が必要
外国語様アクセント症候群は1907年に初めて報告されて以来、世界で100件に満たない極めて稀な症例とされている。
通常とは異なる訛りや外国語のような発音で話すようになり、本人がその変化を自覚していないことも多い。
原因としては、脳卒中や外傷性脳損傷による言語中枢の損傷のほか、精神的ストレス、脳腫瘍、多発性硬化症などが知られている。
患者は母語を話しているつもりでも、子音や母音の発音が微妙に変化し、結果的に外国語の訛りのように聞こえるのが特徴だ。
また、語順が変わるなど文法的に不自然な表現になることもある。例えば「私は店に行った」を「店に私は行った」と話すようなケースである。
治療には、まず原因の特定が必要となる。脳に異常が見つかった場合は医療的治療を行い、明確な損傷がない場合は言語療法が中心となる。
発音の仕組みを分析して矯正するほか、孤独感や抑うつを訴える患者も多いため、心理的サポートが併用されることもある。














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