
米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、医学部への進学を「無意味だ」と述べた上で、自身が開発を進めているロボットが、3年以内に最も優れた人間の外科医を上回るとの見方を示した。
これに対し、医療界の専門家らは、この予測には現実性が欠けると反論しており、主要な手術分野においてロボットが人間の外科医を代替するには、なお数十年を要するとの見方を示し、マスク氏の主張に異を唱えている。
「医大は高価な趣味になる」
マスク氏は7日、ピーター・ディアマンディス氏が司会を務める「ムーンショット・ポッドキャスト」に出演し、医科大学への進学について「無意味だ」との考えを示した上で、「これはあらゆる形の教育にも当てはまる」と語った。
その上で、「社会的な理由から、同じような考えを持つ人々と交流したいのであれば医大に進学することもできる」としつつ、「やがて医大に通うことは、非常に高価な趣味になる時点が来るだろう」と付け加えた。
進行役のディアマンディス氏が「若い世代は、人が自分の体に手を加えることを嫌がるだろう」と同調すると、マスク氏は「しばらくの間はそうだろうが」と述べ、「彼らは危険を冒して生きたいのかもしれない」と応じた。
マスク氏はレーシック手術を例に挙げ、ロボット手術の優位性を説明した。「レーシックのように高度に自動化された医療の例を見てほしい。ロボットがレーザーを使って眼球を治療している」と語った。さらに、「眼科医が手動のレーザーポインターを持って目の手術をすることを望むだろうか」と問いかけ、「たとえ世界で最も腕が良く、手が震えない眼科医であっても、自分の目に手動のレーザーを当ててほしいとは思わない」と述べた。その上で、「人々は手動レーザーを扱う医師と、正確に動作するロボットのどちらを選ぶのか」と強調した。
「3年後にロボットが最高の外科医を超える」
マスク氏は、現在の医療界が抱える構造的な問題にも言及した。現状について「医師、特に優れた外科医が不足している」と指摘し、「優れた医師になるまでに要する学習期間は非常に長く、費用も莫大だ」と述べた。
さらに、「仮に医師になったとしても、医療知識は常に進化している」とした上で、「すべてに追いつくのは難しく、医師には時間的制約があり、ミスも起こり得る」と語った。続けて「優れた外科医が世の中にどれほどいるだろうか」と問いかけ、「決して多くはない」と付け加えた。
ディアマンディス氏が「オプティマス(Optimus)が、現存する最高の外科医よりも手術をうまく行えるようになるのはいつか」と尋ねると、マスク氏はためらうことなく「3年だ」と答えた。
マスク氏は「その3年には大量生産の期間も含まれている」とした上で、「おそらく、地球上のすべての外科医を合わせた数よりも、手術を見事にこなすOptimusロボットの数のほうが多くなるだろう」と主張した。
オプティマス(Optimus)は、テスラが開発を進めている人型ロボットで、マスク氏は2022年に初めて試作品を公開し、翌年には初の量産モデルが登場する可能性を示唆していた。しかし、2年が経過した2024年時点でも市場投入には至っておらず、現在は目標時期を2026年に延期している。
専門家「信頼しがたい主張」
保健政策の専門家らは、マスク氏の予測に対して懐疑的な見方を示している。ニューヨーク大学グロスマン医科大学の生命倫理学者、アーサー・キャプラン教授は、英紙「インディペンデント」のインタビューで「その主張は信頼しがたい」と述べた。
キャプラン教授は、「例えば前立腺手術のようなロボット手術分野の発展は、これまで遅々として進んできた」と指摘した。と指摘した。その上で、「ロボットがわずか3年で、心臓、脳、整形外科、形成外科、小児科など、あらゆる手術領域において人間を上回る可能性は、ほとんどない」と断言した。
その理由として「人体には変数が多すぎ、正確なプログラミングを行うことが難しい」と指摘し、「ロボット手術が人間と同等の水準にあることを立証するには、治療結果を比較・検証するだけでも数年を要するだろう」と説明した。
さらに、マスク氏の見通しについて「過度に楽観的だ」と評した上で、主要な手術分野でロボットを広範に活用することは「今後数年間は不可能だろう」と結論づけた。













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