
最近、欧米でデート中にパートナーを置いて1人で先に行ってしまう、いわゆる「登山破局」が話題になっている。
「登山破局」は、1893年の同名短編小説の題名に由来する。小説では、夫が妻を殺害するためスイス・アルプスに連れて行き、事故死に見せかける行為が「アルプス式離婚」と表現されている。
最近では「TikTok」や「Instagram」などの「SNS」で、欧米のユーザーを中心に「登山破局」に関するハッシュタグが広がっている。多くの女性がこのハッシュタグを付け、自身の登山中の置き去り体験を投稿している。
ある「TikTok」ユーザーは、人けのない山道を1人で歩く動画を投稿し、「一緒にハイキングに来たパートナーに置き去りにされた。そして、相手が最初から自分のことを好きではなかったのだと気づく」という趣旨の内容を公開した。
別の女性も「彼氏が登山デート中に私を置いて行った」とし、遠くを1人で歩く男性の後ろ姿を投稿した。

オーストリア・アルプスでハイキングガイドを務めるステファニー・フェイカーさんは、ニューヨーク・タイムズの取材に対し、「最近『登山破局』が話題になったときも驚かなかった」と話した。ハイキング中、山道で1人きりになっている女性をよく見かけるという。
フェイカーさんは「2024年には、自転車から転落して大けがをし、地面に横たわっている女性を見つけた」と振り返った。「1人で来たのか」と尋ねると、女性は「彼氏と来たが、口論の末に彼が1人で行ってしまった」と答えたという。
また「山で離れた男女が再び合流して下山する場合もあるが、女性だけが取り残されたり、見知らぬ人に助けを求めて下山したりする場合もある」とも説明した。
「登山破局」の体験談が相次ぐ背景には、今年2月にオーストリア・アルプスで起きた事件がある。
今年2月、オーストリアの男性が、アルプスで一緒に遭難した恋人を置いて1人で下山し、死亡させたとして有罪判決を受けた。男性は昨年1月18日夜、オーストリア・アルプス最高峰のグロースグロックナー(3,798メートル)山頂付近で、恋人のケルスティン・グルトナーさん(当時33歳)とともに遭難した。
しかし、男性は適切な救助要請をしないまま1人で下山し、グルトナーさんは低体温症で死亡した。法廷で男性は「彼女には一生申し訳なく思う」と述べたが、事故当時に適切な対応を取らなかった理由については明確に説明できなかった。
さらに、この男性の元交際相手が、過去にも「歩くのが遅い」という理由で置き去りにされたことがあると明かした。その後、同様の体験談がオンライン上で相次いで共有されるようになった。
英紙ガーディアンは、男性が女性を置いて先に行く心理について、単なる悪意だけでは説明しにくく、登山に対する男女の認識の違いも背景にあると分析している。
同紙によると、男性にとって登山は「達成すべき挑戦」と捉えられやすい一方、女性にとっては一緒に時間を過ごす余暇の延長であることが多いという。特に、自然の中で孤独に耐え、困難を克服することを重視する男性的な文化も影響していると指摘した。
オーストリア・アルプスの山岳救助隊で17年活動してきたアンドレアス・トゥルグラーさん(44)は「これは絶対にしてはいけない行為だ」と警告した。「天候が急変する山で、経験の少ない人を置き去りにすることは深刻な結果を招きかねない」と話している。
同紙は、山で1人取り残された場合、すぐに救助隊に助けを求めるか、周囲の登山者を見つけて一緒に下山するよう勧めている。













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