宇宙ゴミの相次ぐ落下…
ロシア(旧ソ連)の金星探査機「コスモス482(Kosmos 482)」が、日本時間の10日午後2時30分頃、チリ南端の西側南太平洋付近に落下した。この探査機は、1972年3月にソ連が無人金星探査任務のためカザフスタンの発射場から打ち上げたものだ。当時、故障で分解された3つの部品がニュージーランド付近に落下し、残りの1つが地球を53年間周回した末に今回落下した。多くの宇宙ゴミは大気圏突入時に燃え尽きるが、重さ485kg、直径1mと推定されるコスモス482は金星大気に耐えるよう設計されており、残骸が地球大気圏を通過した。幸い海上に落下し被害はなかったが、専門家はこの事例が深刻化する宇宙ゴミ落下事故の警鐘になると指摘している。

「宇宙ゴミの落下、恐怖はさらに増す」
肉眼では見えないが、現在地球軌道を周回する宇宙物体の95%以上が「宇宙ゴミ(Space Debris)」だ。寿命が尽きた衛星やロケットの残骸、それらの衝突で生じた無数の破片を指す。欧州宇宙機関(ESA)によると、2025年時点で地球軌道を周回するテニスボール大(直径10cm以上)の宇宙ゴミは5万4,000個に達するという。1〜10cm大の破片は1億3,000万個あり、マイクロメートル(μm)サイズの破片は数え切れない。総重量は1万4,000トンに及ぶ。既に地球低軌道の900〜1,000km帯と1,500km帯は臨界値を超えているとの分析もある。
小さな宇宙ゴミでも、地球落下時には甚大な破壊力を持つ。これらの破片は、通常秒速2〜8万kmで移動するため、銃弾より速い。わずか数mmのネジ1本でも致命的な被害をもたらす可能性がある。1957年の宇宙飛行開始以来、宇宙ゴミの衝突・爆発事故は650件を超える。特に、2009年の米国通信衛星イリジウムとロシアの退役軍事通信衛星コスモスの衝突で生じた2,500個以上の破片は、今も高度600〜1,300kmを漂っている。昨年6月には、国際宇宙ステーション(ISS)付近でロシアの衛星が破壊し、破片との衝突の危険性が高まったため、ISS滞在中の宇宙飛行士9人が緊急避難する事態となった。
宇宙ゴミが地球に落下する事故も続発している。ESAによると、毎週平均1個以上の破片が宇宙から地球に再突入し落下しているとのことだ。昨年2月にはスペースXのロケット「ファルコン9(Falcon 9)」の破片がポーランドとウクライナにそれぞれ落下した。ポーランドに落下した破片は長さ1.5m、幅1m程度の燃料タンクと推定される物体で、民家の裏庭に落下した。幸い人的被害はなかったが、宇宙ゴミへの恐怖が高まるきっかけとなった。ハーバード大学天体物理学教授のジョナサン・マクダウェル氏は「これまで我々は運良く被害を免れてきたが、地球軌道に打ち上げる物体が増えるほど被害の可能性が高まる」と警告している。
対策を模索する国際社会…回収衛星の開発も
宇宙ゴミの危険性が増す中、国際社会は対策を模索している。1995年に米航空宇宙局(NASA)は、高度2,000km以下の地球低軌道に打ち上げた衛星の任務終了後25年以内の回収を義務付ける「25年ルール」を制定。ESAと米連邦通信委員会(FCC)は2023年、これを強化し任務終了後5年以内に軌道離脱を求める「5年ルール」を発表した。
ESAは、スイスの宇宙スタートアップ「クリアスペース(ClearSpace)」と提携し、2028年までにゴミ回収宇宙船の打ち上げを計画。2030年までに「宇宙ゴミゼロ」の達成を目指している。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の支援を受けるスタートアップ「アストロスケール(Astroscale)」は昨年2月、ロケットの残骸回収作業の第一段階として衛星「アドラスJ(ADORAS-J)」を打ち上げた。この衛星でロケットの残骸に接近し損傷状態などを確認した後、宇宙ゴミ除去専用衛星の開発を進める計画だ。
韓国航空宇宙研究院(KARI)は2027年までに超小型衛星を打ち上げ、ロボットアームでゴミ衛星を捕獲し大気圏に誘導して焼却する「捕集衛星」の開発に着手している。