
米国において、男性が「ChatGPT」とのやり取りを続ける中で妄想を深め、80代の母親を殺害するという事件が発生した。当該事件をめぐり、遺族がチャットボット開発企業「OpenAI」を提訴したことが明らかになった。
「ChatGPT」と殺人事件との関連性が法廷で問われる初の事例となる見通しである。
AP通信やロイター通信などが11日(現地時間)に報じたところによると、80代の女性スザンヌ・アダムス氏(83)の遺族は同日、「OpenAI」を相手取り、サンフランシスコのカリフォルニア州裁判所に損害賠償請求訴訟を起こしたとされている。
遺族は、「ChatGPT」が、スザンヌ氏を殺害した息子スタイン-エリック・ソルベルグ氏(56)の偏執的な妄想を悪化させ、母親を殺害するよう助長したと主張している。
元IT企業幹部であったソルベルグ氏は昨年8月、コネチカット州で母親の首を絞めて殺害した後、ソルベルグ氏も遺体として発見された。
提出された文書によると、ソルベルグ氏は当時、母親の部屋にあるプリンターが自身を監視する装置であり、母親が自身を毒殺しようとしていると信じ込んでいた。
遺族は、ソルベルグ氏が「ChatGPT」との会話を続けるうちに情緒的依存が強まり、周囲の人々を敵対勢力と認識するようになったと訴えている。母親だけでなく、配達員や店のスタッフ、警察官、友人たちまでも敵だと信じる陰謀論が強まっていったとも説明した。
ソルベルグ氏と「ChatGPT」の実際のやり取りを確認すると、「ChatGPT」は彼に対し精神疾患はなく、人々が彼を陥れようとしていると確信させるような発言をしていたことが明らかになっている。また、彼のことを「神聖な目的のために選ばれた存在である」と語る場面もあったとされている。
遺族は、「ChatGPT」が専門家への相談を促すことも、妄想に同調するやり取りを止めることもしなかったと指摘し、「OpenAI」が「欠陥のあるチャットボット」を提供した結果、殺人につながったと批判している。
ソルベルグ氏の息子は、「ChatGPT」が父親と現実の人々とのつながりを断ち切ったとし、「OpenAI」は必ず責任を取るべきであると訴えている。

これに対し、「OpenAI」側は「極めて痛ましい出来事である」とコメントし、「詳細を把握するため、訴訟内容を検討する」と述べている。その上で「『ChatGPT』は精神的・情緒的苦痛の兆候を察知し、対話での緊張感を緩和させ、現実世界での支援につなげる機能を強化している」と説明した。
「ChatGPT」が直接的に殺人を促したとする訴えは今回が初めてだが、精神的影響を及ぼす可能性があるとの批判は、これまでも指摘されている。
昨年8月には、カリフォルニア州に住む16歳の少年アダム・レイン氏の遺族が、「ChatGPT」が息子の死に責任があるとして訴訟を起こした。













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