
日本政府が、自国で開発された農産物品種の海外における権利保護問題に対応するため、新品種の権利保護を専門に担う機関を設立する方針を固めた。シャインマスカットをはじめとする主要品種が韓国や中国などで広く栽培されるようになり、知的財産権保護を求める声の高まりを受けた措置だ。
日本経済新聞などが10日、日本政府と民間が今年8月の発足を目指し、関連の管理機関を立ち上げる計画だと報じた。農林水産省はこの機関を種苗の専門機関として認定し、運営を支援する方針としている。農業分野の育成者権(新品種に対する知的財産権)を専門的に管理する組織の設立は、今回が初めてとなる。
海外での無断栽培を監視、訴訟も視野に
新機関は、公的研究機関や地方自治体が保有する育成者権の委託を受け、国内外での権利保護を一元的に担う。海外での栽培状況を常時監視し、権利侵害が確認された場合には国際訴訟を含む法的措置にも乗り出す、いわば「農業IP(知的財産)対応組織」として機能する見通しだ。
加えて、海外で広く栽培されている日本品種について、正規のライセンス契約への移行も並行して進める。種苗企業や海外の管理機関と契約を結び、品種を供給したうえで、ロイヤリティー収入を研究開発に再投資する好循環の仕組みを構築する構想だ。
33年かけて開発されたシャインマスカット、海外での品種登録の遅れが課題に
今回の対応の背景には、シャインマスカットをめぐる問題がある。農研機構が1988年に開発に着手し、2006年に品種登録したこの高級ブドウは、現在、中国や韓国で大規模に栽培されている。
特に中国では2022年時点の栽培面積が約7万3,700ヘクタールに達し、日本の約30倍に上る。日本政府は、正式なライセンス契約があれば得られたはずのロイヤリティーを基準に試算し、年間100億円以上の損失が生じているとみている。
実際の調査でも、日本で開発された品種が海外で流通している実態が確認された。農林水産省が韓国・中国の種苗業者のオンライン販売を調査したところ、イチゴやミカン、ブドウなど約50品種の日本の育成品種が流通していたという。
「日本品種を盗んだ」との主張は事実ではない
一方、韓国ではシャインマスカットの栽培について、法的な問題はないとの立場を示している。日本側が開発当時、海外での品種登録を期限内に行わなかったため、権利保護の対象範囲が限定されたことが理由とされている。
国際的な制度では、海外で品種の権利保護を受けるためには一定期間内に登録手続きを完了しなければならない。しかし、日本はその期限内に必要な手続きを行わなかった。このため、韓国におけるシャインマスカットの栽培や流通は、現行法上は問題ないとされている。
日本政府は今回の専門機関設立とあわせて、種苗法改正も推進している。品種登録の出願段階から種苗の違法な海外流出を防止できるよう定めた種苗法改正案を、今国会で成立させる方針だ。













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