中国は海外の科学・技術・工学・数学(STEM)専攻の卒業生を対象に、新たな「Kビザ」制度を導入したが、政策の実施前に国内では逆差別をめぐる論争が広がっている。

30日(現地時間)、香港の「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」によると、Kビザは就職オファーや招待状がなくても、外国人卒業生が中国への入国・滞在・就労を可能にする制度である。北京は米国との研究開発競争激化を背景に、高度な科学技術人材の積極的な誘致を戦略としてこの措置を打ち出した。中国当局は、資格要件が年齢、学歴、経験などで区分されると述べたが、具体的な基準はまだ公表していない。
当局の期待に反し、政策発表直後に中国国内の世論は批判的な方向に傾いた。中国最大のSNSである微博(ウェイボー)では「中国がKビザを導入する」というハッシュタグが6,000万回以上閲覧され、300万件を超える議論が展開された。多くのネットユーザーは「国内の卒業生は修士号まで取得しないと就職できないのに、外国の学士卒業生がすぐに『技術人材』として認められるのは公平か」「中国国内の若者を逆差別する政策だ」と反発。また「中国の教育システムが海外より劣っていると自ら認めているようなものだ」という批判もあがった。
一部では、雇用主の保証要件が撤廃されれば、ビザ仲介業者による詐欺的行為が急増する可能性があると指摘された。従来の就労ビザは企業が雇用を保証する必要があり、審査の仕組みがあったが、Kビザは個人申請が可能となり、虚偽書類や違法ブローカーの介入リスクが高まるという。あるコミュニティユーザーは「中国国内の学歴確認でさえ厳しいのに、海外の学位を一つ一つ確認するには膨大な行政負担が生じる」と懸念を表明した。
専門家らも問題点を指摘し始めた。シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のアルフレッド・ウー教授は「政策決定過程の不透明さと大衆とのコミュニケーション不足が不安を助長している」と述べ、「政府が基準と統計を透明に公開すれば懸念は軽減される」と語った。上海の華東師範大学のジョセフ・マホニー教授は「パンデミック後のビザ自由化の流れと連動した措置だが、段階的な実施と信頼確保が鍵となる」と評価した。中国人民大学の周新宇(ジョウ・シンユー)教授は「グローバル人材獲得競争の中で、ビザ改革は不可欠だが、現地の労働市場への影響管理は政府と企業の共同の課題だ」と強調した。
政策の背景には、米国の移民規制強化もある。トランプ政権は今年9月、外国人技術者向けH-1Bビザの申請手数料を年間10万ドル(約1,472万1,306円)に大幅に引き上げた。毎年抽選で発給されるH-1Bビザは8万5,000件に過ぎず、事実上外国人材の流入障壁を高めたことになる。ある国際関係専門家は「米国が障壁を築く一方、中国は開放拡大を通じて代替案を提示している」とし、「Kビザは国際的な技術人材獲得競争において中国が戦略的優位を得ようとする試みと見なせる」と分析した。
ただし、制度の成否は透明性と明確な基準の設定にかかっているとの指摘が多い。現在、中国国内の若年層失業率が高い状況下で、外国人材の誘致が労働市場の不安定化を招く可能性があるとの懸念も高まっている。ある政策アナリストは「中国国内の若者の不満を考慮せず、海外人材誘致だけを強調することは社会的軋轢を生む可能性がある」とし、「政府は現地労働者と外国人材のバランスを取るための補完策を講じるべきだ」と述べた。
マホニー教授は「米国が技術封鎖を試みる状況下で、海外人材が中国に移動することは中国の戦略的勝利を意味する」としつつ、「ただし、制度が信頼を得られなければ、逆に政治的負担となる可能性がある」と指摘した。
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