人種アイデンティティの象徴「もみあげ」を切るよう要求され怒った黒人従業員
米カリフォルニア州の人気ハンバーガーチェーン「イン・アンド・アウト・バーガー(In-N-Out Burger)」で働いていた黒人従業員が、自身のもみあげを剃るよう命じられたことを人種差別と受け止め、多額の損害賠償を求めて訴訟を起こした。
この件は、職場の身だしなみ規定と人種的アイデンティティとの間の摩擦を示す象徴的な事例として注目されている。

英『デイリーメール』などの報道によれば、訴えを起こしたのは、カリフォルニア州コンプトンの店舗で約4年間勤務していた21歳のエリヤ・オベン氏。今月13日、コンプトン高等裁判所に訴状を提出し、総額320万ドル(約4億6,520万円)の損害賠償を求めている。
同社は男性従業員に対して、会社支給の帽子を着用し、髪を帽子の中に入れるよう義務づけており、無精ひげの状態での勤務も禁じている。オベン氏は規定に従って髪を編んで勤務していたが、上司はもみあげ部分に問題があるとして指摘した。
黒人文化と人種的アイデンティティの象徴、もみあげ
オベン氏側は、もみあげは黒人文化および人種的アイデンティティの一部であり、それを剃るよう強制するのは明確な差別だと主張している。もみあげ(Sideburns)は南北戦争時代の北軍将軍アンブローズ・バーンサイド(Ambrose Burnside)に由来し、1960~70年代の黒人社会では誇りと自己表現の象徴とされてきた。
オベン氏は勤務前、他の従業員の前で「もみあげを剃ってこい」と上司に公然と指摘され、深い屈辱を味わったと証言した。その後帰宅し、次の勤務には出勤すると連絡したが、数日後に解雇を告げられた。
イン・アンド・アウト側は「以前から彼には複数の警告が出されていた」とし、髪型を理由とする解雇ではないと主張している。しかしオベン氏は、解雇の本当の理由は累積警告ではなく、自身の外見的特徴に対する偏見だと反論している。
また、今回の件で「不安や羞恥心、自尊心の喪失などの精神的苦痛を受けた」として、報償金100万ドル(約1億4,541万円)、精神的損害に対する200万ドル(約2億9,079万円)、賃金損失分20万ドル(約2,907万8,933円)の損害賠償を求めている。
オベン氏の代理人は、本件がカリフォルニア州の「CROWN法(Creating a Respectful and Open World for Natural Hair)」に違反する明白な例であると指摘した。同法は、雇用主が自然な髪質や髪型を理由に従業員を差別することを禁止している。