米軍のバンカーバスターでも破壊困難?イラン核施設フォルド、空爆では止められない現実

19日(現地時間)、トランプ米大統領はイラン核施設への直接攻撃案から一歩引いたとされ、これは軍事介入による深刻な余波を懸念した結果だとみられている。米情報機関関係者や政府高官の間では「空爆は核計画を遅らせても、完全に潰すことはできない」とする見方が広がっている。
注目されるのは、地下80〜90メートルという「鉄壁の防御」を誇るフォルド施設の存在。米国が誇る超大型貫通弾GBU-57、通称バンカーバスターでさえ、破壊できるかは不透明だ。『フォックスニュース』や『アクシオス』は、トランプ大統領がその不確実性に強く引っかかっていると報じた。
実際、この兵器はまだ実戦投入されたことがなく、同じ場所に複数回の投下が必要とされるが、その成功は保証されていない。加えて、これを搭載可能なB-2ステルス爆撃機も米軍のみが保有しているため、選択肢は限られる。
英『ガーディアン』によれば、トランプ大統領は「確実に破壊できる保証がなければ作戦は踏み切れない」と国防総省に伝えたとされ、攻撃への慎重姿勢が際立っている。
しかし懸念はそれだけではない。仮に攻撃が行われれば、イランは報復として核拡散防止条約(NPT)を脱退し、北朝鮮と同様の道を歩む可能性があるという声も出ている。米『ニューヨーク・タイムズ』は「現在、イランはまだ核武装を決断していないが、米国の攻撃があれば方針を転換する可能性が高い」と米政府高官の見解を紹介した。
イスラエルによる1981年のイラク・オシラク原子炉への攻撃のように、「爆撃で核を止める」という幻想はすでに崩れている。現実には、施設を壊しても技術と意志が残れば再建は時間の問題だ。
元オバマ政権のWMD調整官ゲイリー・セイモア氏も、「空爆だけでは核プログラムを終わらせることはできない。フォルドが無傷で残れば、再開に時間はかからない」と断言した。
さらに専門家たちは、イランがすでに他の場所に遠心分離機などを移動させている可能性も指摘。つまりフォルド施設が破壊されても、全体の核開発能力を無力化する保証はどこにもない。
「抑止」の名の下に始まる軍事行動が、むしろ相手の決断を固める可能性もある。歴史がそれを物語っている。