米国防省内の情報機関が、バンカーバスターなどを使用したイラン核施設攻撃の初期評価で、イランの核プログラムの核心部分を完全に破壊できなかったと判断したことが明らかになった。ドナルド・トランプ米大統領は「フェイクニュース」と反論し、ホワイトハウスも「完全な誤報」と非難した。トランプ大統領が爆撃から2日後にイスラエルとイランの停戦を宣言したものの、空爆の効果を巡る論争が激化している。
◇「核プログラムを6か月遅らせた程度」

CNNとニューヨーク・タイムズ(NYT)は24日(現地時間)、米国防総省の情報機関である国防情報局(DIA)が米中央軍の「戦闘被害評価」を基に作成した初期評価を引用し、今回の爆撃がイランの核施設を完全に破壊できなかったと報じた。米軍は21日、「ミッドナイト・ハンマー」(真夜中の鉄槌)と名付けた作戦で、7機のB-2爆撃機を使用してバンカーバスター14発を投下し、潜水艦から30発の巡航ミサイルを発射。フォルドウ、ナタンズ、イスファハンの3か所の核施設を攻撃した。
しかしCNNは、内部情報に詳しい2人の情報源を引用し、イランが保有する濃縮ウランが破壊されていないと伝えた。濃縮ウランは濃縮度を高めると核兵器の原料となり得る。先月、国際原子力機関(IAEA)はイランが準軍事級の60%濃縮ウラン408.6kgを保有していると発表した。
CNNの取材に応じた別の情報源は、ウラン濃縮の核心設備である遠心分離機もほぼ無傷だとし、「DIAの評価では、米国はイランの核プログラムを完全に破壊したのではなく、おそらく最大数か月遅らせただけだ」と述べた。CNNによると、DIAの初期評価では、イランの核施設の破壊はほとんど地上構造物に限定されたという。
NYTも、イランが保有する濃縮ウランの大部分を空爆前に別の場所に移動させていたという内容がDIA報告書に含まれていると伝えた。また、DIA報告書は今回の爆撃でイランの核計画が遅延したものの、その期間は6か月未満と評価したとNYTは報じた。爆撃前、米情報機関は「イランが急げば核兵器保有まで3か月」と見積もっていた。
◇ホワイトハウス「全くの誤報」
ホワイトハウスは強く反発した。キャロライン・レビット報道官は、CNNが報じたDIAの初期評価について「全くの誤り」と断言した。ピート・ヘグセス国防長官も「私は全過程を監視した」とし、「我々の爆撃はイランの核兵器生産能力を壊滅させた」と述べたとNYTは伝えた。トランプ大統領は空爆直後、イランの核施設について「壊滅したというのが正確な表現だ」と述べた。その後、NATO首脳会議が開かれるオランダに向かうエアフォースワンで「その報道はフェイクニュースだ」と反論した。イスラエル首相府は前日、「イスラエルは核と弾道ミサイルという即刻的かつ実存的な(イランの)脅威2つを除去した」と発表した。
◇結局は外交的解決か
イランは核施設が攻撃された直後から大きな被害はないと主張してきた。イラン原子力庁(AEOI)のモハマド・エスラミ長官は前日、「核活動再開のための一連の準備を事前に整えており、原子力産業の生産・活動プロセスの中断を防ぐ計画が立てられていた」とし、「攻撃を受けた核施設の被害規模を評価中だ」と述べた。
まだ関連情報が不足しており、論争よりも慎重なアプローチが必要だとの指摘もある。IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は前日の声明で、「(使用された爆弾の)爆発力と振動に特に敏感な遠心分離機の特性を考慮すると(フォルドウ地下核施設に)非常に深刻な被害が生じたと思われる」としつつも、「現時点ではIAEAを含め誰も地下核施設の被害を完全に評価できる立場にはない」と述べた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、米情報機関の機密報告書がより多くの情報が収集された後に修正されることは珍しくないと伝えた。米情報機関の初期評価が変更される可能性があるということだ。
イランの核問題は今後も論争が続く見通しだ。イランの核プログラムが中断されなければ、イスラエルと米国による追加攻撃の可能性も排除できないからだ。イランの核開発を阻止するためには、最終的には外交的解決が必要だとの指摘も出ている。
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