
日本の主力ロケット「H2A」が50号機で最後のフライトを終え、20年以上にわたる運用に幕を下ろした。29日午前1時33分、鹿児島県種子島宇宙センターから打ち上げられた機体は温室効果ガス観測衛星「いぶきGW」を無事に軌道へ投入し、その役割を完遂した。
2001年の初打ち上げ以降、H2Aは6号機を除く49回で成功を収め、成功率は驚異的な98%。小惑星探査機「はやぶさ2」、月着陸実証機「SLIM」など、日本の深宇宙探査プロジェクトを支え続けた。
しかし、全高53mの液体燃料ロケットは1回あたり100億円超のコストが重くのしかかり、再使用型でコストを抑える米スペースXに対抗するには不利との指摘が絶えなかった。
後継のH3は2023年に試験運用を開始。初号機こそ失敗したが、2~5号機は連続成功を記録している。推進力はH2Aを上回り、打ち上げ費用は約半減。商業衛星マーケットで価格競争力を持つ切り札として注目を集める。
JAXAの山川宏理事長は「H2Aで築いた技術と信頼はH3へ確実に継承される。民間・国際需要を取り込むには、競争力の強化が急務だ」と語り、年間打ち上げ回数の増加と種子島発射場の設備拡充を急ぐ考えを示した。
政府と三菱重工業はH3を前面に据え、再使用型の開発も視野に入れながら、宇宙輸送ビジネスでの巻き返しを狙う。H2Aが築いてきた高い信頼を礎に、新世代ロケットがどこまで躍進できるかが試金石となる。
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