
デンマーク・コペンハーゲン近郊のドラウエア砦に設置された人魚像が「不適切」との批判を受け、同国の宮殿・文化庁が撤去を決定した。この像は「グレート・マーメイド(大きな人魚)」と呼ばれ、高さ約4メートル。観光名所である「リトル・マーメイド像」とは異なり、ムネが強調された造形で、公共空間にふさわしくないとの声が相次いでいる。
デンマーク紙『ポリティケン』の美術評論家マティアス・クリューガー氏は、「この像は芸術ではなく、醜くて外聞が悪い」と切り捨てた。
聖職者でありジャーナリストでもあるソーレン・ゴットフレッドセン氏も「女性の身体がどうあるべきかという男性の性的な理想を表現したものであり、多くの女性にとって自己肯定の妨げになりうる」と非難した。
彼はさらに「多くの人がこの像を不快で不適切だと感じているという事実自体が希望につながる」とし、「公共空間における圧迫的な裸体表現が息苦しさをもたらす」と訴えた。
これに対して、像を制作した彫刻家ピーター・ベック氏は「胸の大きさは全体のバランスに基づいたものであり、性的な意図は一切ない」と反論した。
日刊紙『ベアリンゲスケ』の編集者アミナタ・コール・トラン氏は、「女性の裸は、一定の理想的なサイズと形でなければ公共に展示できないということなのか」と問いかけ、「この人魚像は他の像より露出が少ないが、ムネが大きいという理由で問題視されているのではないか」と分析している。
この像は以前、コペンハーゲンのランゲリニエ海岸に設置されていたが、地元住民から「偽物の人魚姫」との批判が出て2018年に撤去された経緯がある。その後、現在の場所であるドラウエア砦に移設された。
ベック氏は今年3月、当局から撤去要請を受けた際にこの像を砦のある自治体に寄贈する意向を示したが、「スペースを取りすぎる」との理由で断られたとされている。
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