米トランプ政権が中国共産党のために働き、現地の法治を損なった中米諸国の国民に対し、米国ビザの発給を制限する新たな制裁を打ち出した。マルコ・ルビオ米国務長官は4日(現地時間)、声明を発表し、「中米諸国内で中国共産党のために意図的に活動し、当該地域の法治を損なう行為を指示、承認、資金提供、または実行する中米諸国の国民に対し、米国ビザの発給を制限する」と述べた。この政策は過去にこのような活動に関与した人物にも遡及適用される。
ルビオ長官は「結果として、これらの個人とその直系家族は通常、米国入国資格を失うことになる」と付け加えた。ただし、米国務省は具体的にどの人物がどのような活動で制裁対象となったかを明らかにしていない。このため、一部では今回の措置が特定の違法行為への処罰というより、中国への警告や中米諸国への圧力といった政治的目的が大きいとの見方が出ている。

中南米は1823年のモンロー宣言以降、米国が「勢力圏」とみなし、絶対的な影響力を行使してきた地域だ。しかし近年、中国は巨額の資本を背景にこの構図を揺るがしている。中国は「一帯一路」構想を通じて、パナマ、コスタリカ、エルサルバドルなど中米諸国の港湾や鉄道などの重要インフラ事業に深く関与している。また、経済支援を梃子に、これらの国々に台湾との断交と中国との国交樹立を促してきた。実際、パナマ(2017年)、エルサルバドル(2018年)、ニカラグア(2021年)が台湾との国交を断ち、中国寄りに転じている。
米国の立場からすれば、これは単なる経済協力を超えた安全保障上の脅威だ。中国がパナマ運河周辺などの戦略的要所で影響力を確保し、将来これを軍事目的に利用する可能性が懸念されるためだ。ルビオ長官は今回の措置について「西半球における米国の経済的繁栄と国家安全保障上の利益を守るという米国のドナルド・トランプ大統領の意思を再確認したものだ」と強調した。

専門家らは今回のビザ制限措置を、中国を狙い撃ちにした「ピンポイント圧力」だと分析している。米国の陸軍大学校でラテンアメリカを研究するR・エバン・エリス教授はAP通信に対し、「米国が中米地域のエリートたちに『中国と取引すれば代価を払うことになる』という明確なメッセージを送っている」と述べ、「中国と癒着した汚職官僚を狙う効果的な手段になり得る」と評価した。
一方で、この措置の限界や副作用を指摘する声も上がっている。元国務省高官であり、米シンクタンク、ウィルソンセンターの中南米担当ディレクター、ベンジャミン・ゲダン氏は「ビザ制限は対象者に実質的な打撃を与えるが、中国の影響力を抑える根本的な解決策にはならない」と指摘した。彼は「むしろ、対象国政府の反発を招き、米国との関係を悪化させ、これらの国々をさらに中国側に押しやる結果を招く可能性がある」とロイター通信に語った。
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