
イスラエルが9日(現地時間)、ガザ地区停戦交渉の仲介役を務めてきたカタールを電撃空襲したことが、戦況にどのような影響を与えるか注目されている。国際社会では、カタール領内への前例のない軍事作戦を敢行したイスラエルが戦争をさらに拡大するのではないかとの懸念が高まっている。一方、イスラム組織ハマス内の強硬派の影響力が低下すれば、むしろ「合意」への道筋が早まる可能性もあるとの見方が出ている。
この日のイスラエルの標的は、ハマスの交渉代表団を率いるカリル・アルハイヤ氏をはじめ、ザヘル・ジャバリン氏、ハーリド・マシャアル氏など、ドーハを拠点に活動するハマス政治局幹部とされる。ハマスは主要幹部全員が無事だと主張している。空襲時、これらの幹部は一堂に会し、ドナルド・トランプ米大統領の中東特使スティーブ・ウィトコフ氏が提示した停戦案を検討していたとされる。
停戦交渉の橋渡し役を務めてきたカタールは、当面、仲介役を中断する方針だとサウジアラビアのメディア「アル=アラビーヤ」が報じた。ハマス政治局事務所を自国の首都に置き、密接な関係を築いてきたカタールが手を引けば、残る仲介国エジプト単独では停戦協議の枠組み作りが困難になる可能性がある。こうした状況を踏まえると、イスラエルが停戦協議の進展を妨害する意図で空襲を行ったのではないかとの見方さえ可能な状況だ。
アラブ系メディア「アルジャジーラ」は分析記事で、イスラエルはガザ市の全パレスチナ人に避難を求めながら軍事作戦を継続し、ハマスの壊滅を主張し続けていると指摘した。交渉結果に関係なく戦争を継続する方針であると報じた。
紛争専門シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のイスラエル担当上級アナリスト、メイラヴ・ゾンズァイン氏(Mairav Zonszein)は、アルジャジーラのインタビューで、イスラエルは停戦や交渉に全く関心がないと述べ、ドーハでハマス指導部が排除されてもイスラエルのガザ地区での戦争戦略に「ゲームチェンジャー」とはならないだろうと解説した。
イスラエルとハマスの間で停戦「合意」を促してきた米国でさえ、今回の空襲に不満を表明した。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、イスラエルが空襲計画を米国に事前通告したとしながらも、これはイスラエルや米国の目標達成に寄与しないと批判した。レビット報道官によれば、トランプ大統領もカタールが空襲の場になったことに不快感を示し、カタール側に再発防止を約束したという。

ただし、イスラエルが中東の米軍空軍基地として最大規模のアル・ウデイド空軍基地や、米軍中部司令部の現地本部が置かれているカタールを攻撃するにあたり、米国とある程度の調整をしなかったとは考えにくい。米国の圧力にもかかわらず、ハマスが停戦案を受け入れず数週間にわたって時間を稼いできたことが、今回の空襲の口実となった可能性もある。
イスラエルの日刊紙「エルサレム・ポスト」は、当面は停戦「合意」が困難になる効果が優勢かもしれないとしながらも、ハマス幹部が(協議の)ボトルネックであったとすれば、これを揺さぶることでより迅速な二者択一的決断を迫ることができるかもしれないと分析した。
ここ数か月間、停戦協議が行き詰まる中、ガザ地区の人道危機をめぐって国際社会からの批判が高まっていることを考えると、ハマスは時間を最大限引き延ばす戦略を取り、イスラエルはこれを打破しようとしたとの見方がある。
イスラエルのメディア「Yネット」は、今回の空襲は強硬派を狙った心理戦であり、その目的はアルハイヤ氏とジャバリン氏を交渉テーブルから排除することだったと解釈した。ハマス代表団内で非妥協的な強硬路線を主導してきた彼らが外れれば、交渉のペースが上がる可能性があると指摘している。
これに関連して、最近ハマス指導部の一員であるイッズ・アルディン・アルハッダド氏(Izz al-Din al-Haddad)が米国の提案を受け入れる方向に傾き、アルハイヤ氏やジャバリン氏らと対立したことが明らかになったとYネットは伝えている。Yネットは、ハマスが一時的に交渉を中断するものの、その後交渉が再開される可能性が高く、ハマス指導部のより柔軟な人物がこれを主導することになるかもしれないと予測した。
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