
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、自身に対する過去の連邦政府の捜査が不当だったとして、米司法省に2億3,000万ドル(約350億円)の補償金支払いを要求していると、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が21日(現地時間)報じた。
報道によると、トランプ氏は第2期就任前の2023~2024年にかけて、米司法省にこうした行政請求(administrative claim)を提出したという。これは連邦裁判所への訴訟に先立ち、政府機関との和解の可能性を検討する手続きで、米司法省が却下した場合、請求者は裁判所に提訴できるとされている。
トランプ氏は、2016年大統領選でのロシア介入疑惑やトランプ陣営の関与をめぐる連邦捜査局(FBI)および特別検察官による捜査が自身の権利を侵害したとして、2023年末に最初の補償金請求を行った。さらに、FBIが2022年にフロリダ州のマー・ア・ラゴの私邸を家宅捜索し、プライバシーを侵害したとして2024年夏に追加請求を提出した。
米司法省の指針では、400万ドル(約6億円)を超える和解金には必ず次官または次官補の承認が必要とされている。しかし、現司法副長官のトッド・ブランシュ氏はトランプ氏の「性的スキャンダル口止め疑惑」など複数の主要刑事事件で弁護を担当した人物で、トランプ氏の側近として知られる。そのため、今回の請求には利益相反の懸念があるとの指摘が出ている。
NYTはこの件しい関係者の話として「トランプ氏側は連邦政府から補償金を受け取れると期待している」と伝えた。米司法省が請求を受け入れた場合、補償金は税金から支払われる。ただし、司法省には和解内容を公開する義務がないため、仮にトランプ氏に数億ドルの補償金が支払われたとしてもすぐには明らかにならない可能性が高いと、元・現職の司法省関係者は説明している。
一方、トランプ氏はこの日ホワイトハウスで記者団から「司法省に補償を求めているのか」と問われ「そうだ」と答えたうえで「あの件で彼らは私にかなりの額を払わねばならない」と述べたという。さらに「私は大統領としての給与をすべて寄付している。もし国から金を受け取ることになっても、慈善団体に寄付するか、ホワイトハウスの修復などに使う予定だ」と付け加えた。
ペース大学のベネット・ガーシュマン倫理学教授は「トランプ氏を補佐する人々が、彼が勝つかどうかを判断する立場にある」とし「これは極めて基本的かつ根本的な倫理的衝突だ」と批判した。
コメント0