ロシア、ウクライナのエネルギー施設に連日空爆
押し寄せるロシア軍、ウクライナ軍は包囲状態に 「要塞ベルト」までドンバス制圧を狙う

ロシアが2022年2月に始まったウクライナ戦争の最大の激戦地とされる東部ドネツク州ポクロウスクを、まもなく完全に制圧する見通しだとアメリカのCNNが8日に報じた。
旧ソ連時代から東部の交通拠点だったポクロウスクは、開戦後はウクライナ軍がドネツク全域へ物資を供給する兵站基地として機能してきた。ここを失えば、ウクライナにとって大きな痛手となる。
ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア系住民が多いウクライナ東部「ドンバス」(ドネツク州とルハンスク州を合わせた地域)をロシア領に編入する意向を公言している。したがってポクロウスクの陥落は、ドンバス全体の支配という彼の目標に一段と近づく足掛かりになるとみられる。停戦交渉においても、ロシアの交渉力を大幅に高める要因になるだろうと英BBCなどが分析している。
特に、先月21日に予定されていた米露首脳会談(ハンガリー・ブダペスト)が実現しなかった後、プーチン大統領が米国とウクライナの双方に圧力をかけるため、ポクロウスクの制圧に注力しているとの見方が出ている。セルゲイ・ラブロフ外相も9日、「戦争終結の方策を協議するため、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官と会う準備がある」と述べた。
「多数の死傷者にもかかわらず17万人を投入」
ウクライナ軍関係者も、ポクロウスク陥落の現実味を認めている。ウクライナ軍のある大隊長はCNNに対し、「ほぼ包囲されている。市街戦と砲撃が絶えず、状況は厳しい」と語った。
ロシアの優勢を支えるのは圧倒的な兵力だ。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、英ガーディアン紙とのインタビューで、ロシアがドネツク州に少なくとも17万人の兵力を投入していると明らかにした。先月だけで約2万5,000人の死傷者が出たにもかかわらず、ロシア軍は引き続き兵士を送り込み、戦力の優位を維持しているという。ポクロウスクに配置されたウクライナ軍ドローン部隊の兵士も「押し寄せるロシア軍の数があまりに多く、ドローンでは防ぎきれない」と訴えた。
ロシア軍はポクロウスクと衛星都市ミルノフラードを制圧した後、さらに他の都市の攻略を狙うとみられる。特に、コスチャンティニウカ、ドルジュキウカ、クラマトルスク、スラビャンスクへと続く、いわゆる「ドンバス防衛ライン」に攻勢を集中させる可能性が高い。コスチャンティニウカ付近に展開するウクライナ第129旅団の兵士は「増援が間に合わず、兵士も装甲車も足りない」と語った。
ポクロウスクを奪えなかった場合でも、ロシアはすでに一定の成果を上げたとの見方もある。戦前は約6万人だった人口が、現在はおよそ1,200人にまで減少し、実質的に「ゴーストタウン」と化しているためだ。
ただし、ロシアがドンバス全域を支配するまでにはなお長い時間がかかるとの見方が支配的だ。米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、「ドンバス完全制圧には少なくとも数年を要する」と分析している。
エネルギー施設を空爆 キーウで10時間の停電
ロシア軍は冬を前に、ウクライナのエネルギー施設を狙った大規模な空爆も行っている。8日には全国で少なくともミサイル45発とドローン458機を発射し、主要なエネルギー施設を攻撃した。この影響で民間人11人が死亡し、40人以上が負傷した。
首都キーウと第2の都市ハルキウでは一斉に停電が発生し、とくにキーウは8日、約10時間にわたり電気と水道が止まり、街全体が寒さに見舞われた。
ウクライナも7日、ロシア南部ボルゴグラード州の石油施設を空爆するなど反撃に出たが、英タイムズ紙は「政府がインフラを十分に守れなかったことへの国民の不満が高まっている」と指摘した。
また、ウクライナを訪問中だった米国の女優アンジェリーナ・ジョリーは9日、自身のインスタグラムで「ロシアの絶え間ないドローン攻撃の脅威を肌で感じた」と投稿した。
















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