ロシア、電力網に続きガスインフラ攻撃を強化
ゼレンスキー大統領、ギリシャ訪問で供給協定に署名
ギリシャ、欧州内陸へ米国産LNGを運ぶ「エネルギーハブ」に

ロシアによる相次ぐガス関連インフラ攻撃で厳しい冬を覚悟していたウクライナが、ギリシャを経由して米国産の液化天然ガス(LNG)を調達することで合意し、状況が一歩改善した。ウクライナは天然ガスを産出するものの、多くの生産設備がロシア軍に占領・破壊され、生産量が大幅に減少していた。
ギリシャは近年、米国と連携してLNGの輸入ターミナル(荷揚げ・再ガス化設備)を拡充し、欧州のロシア産ガス依存を下げる取り組みを進めている。ブルガリア、ルーマニア、ウクライナに接続するガスパイプライン網を通じ、米国産LNGを欧州内陸部へ送る「エネルギーハブ」としての役割を担っている。
ロイター通信によると、ギリシャ最大のガス公社DEPAとウクライナの国営エネルギー大手ナフトガスは16日、共同声明で「来月から来年3月までウクライナに天然ガスを供給する協定を締結した」と発表した。声明では「欧州のエネルギー安全保障を強化するうえで重要な一歩だ」と強調している。
協定の署名式にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相、そして新任の米国大使キンバリー・ギルフォイル氏が立ち会った。
ミツォタキス首相は「ギリシャからウクライナへ向かう安全なエネルギー回廊が構築された」と述べ、「ロシア産ガス依存を終わらせる決定的な措置だ」と評価した。これに対しゼレンスキー大統領は「ロシアは毎晩エネルギー施設を攻撃しており、今冬は国民にとって大きな試練になる」と語り、「ギリシャ経由で米国産ガスを確保できるようになった」と述べた。特にドナルド・トランプ米大統領への謝意も示した。

ロシア、今年は「ガスインフラ」を重点攻撃
ロシアはこれまでウクライナの電力網を集中攻撃していたが、今年は標的をガスインフラに移した。ガス管への攻撃はロシア側にも損失が及ぶため抑制してきたが、来年1月に両国のガス輸送契約(5年契約)が終了することから、保護する経済的理由がなくなったとみられる。
実際、ナフトガスのガス関連施設は先月だけで7回攻撃を受け、生産の60%が停止する事態に陥っていた。冬季の暖房供給にも深刻な影響が出る恐れが高まっていた。
ゼレンスキー大統領は今回の協定について「ロシアの攻撃で失われたガス生産分を補うため、約20億ユーロ(約3,600億円)の調達を進める」と述べた。資金はウクライナ政府、欧州系金融機関、EUの保証などを通じて確保する計画で、大統領はギリシャ訪問後、フランスとスペインを相次いで訪れ、エネルギー協力の拡大を協議する予定である。
















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