所有証明は現地で書類提出を
押収財産を軍人・ロシア系住民に分配

ロシアがウクライナ東部の占領地で、住民の財産を没収することを事実上合法化する法律を成立させ、戦争を避けて国外や国内他地域に逃れたウクライナ避難民が自宅を失う恐れが高まっているとキーウ・インディペンデントが23日に報じた。占領地を「ロシア領」と宣言したもので、停戦交渉において領土を譲歩する意思がないことを内外に示す狙いがあるとみられる。ロシアが交渉で優位に立っているとの印象を強め、占領地に残る住民の「ロシア化」を進める意図もあるとの見方が出ている。
ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領は25日のクリスマスメッセージで、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領を念頭に「彼が消滅することを願う」と述べた。プーチン大統領の死を望むかのような強い表現で、戦況で不利な立場に置かれているウクライナの切迫感を反映した発言と受け止められている。
ロシア、占領地でウクライナ避難民の住宅を没収
ロシア下院(ドゥーマ)は最近、2022年2月のウクライナ侵攻開始以降にロシア軍が占領したウクライナ南東部のドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州でロシア法に基づき登録されていない不動産を国家(ロシア)所有とすることを認める法案を可決した。没収した住宅や資産は軍人や公務員、ロシア系住民らに分配されるという。プーチン大統領は15日にこの法案に署名した。
これにより、すでに約5,000戸のアパートがロシア当局の管理下に置かれたとされる。さらに毎週100戸から200戸の住宅が新たに没収されているという。
戦争前に4州に居住していたものの、侵攻後に避難を余儀なくされたウクライナ人にとっては、住居と財産を一方的に失う事態となる。ロシア当局は「所有権を証明するには、本人が現地に来てロシアのパスポートや関連書類を提出する必要がある」としており、事実上の没収を進める構えだ。ドネツク州マリウポリ出身で避難中のアンナ・シェウチェンコ氏(30)は「ロシアが私のアパートを奪っているのに止める手段がないことに絶望している」と語った。
米国仲介下でもロシア・ウクライナの溝は埋まらず
一方、ウクライナ大統領府は24日、20項目からなる和平案を公表した。内容には米国、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合によるウクライナへの安全保障の提供や、ロシアによる不侵攻の法的明文化、ウクライナのEU加盟などが盛り込まれている。
だが、領土問題をめぐる双方の隔たりは依然として大きい。ウクライナは現行の前線を基準に交渉を行い、同地域からウクライナ軍が撤退する場合はロシア軍も同時に撤退すべきだと主張する。一方、ロシアは占領下にある4州からのウクライナ軍の完全撤退と、領有権の全面的な譲渡を求めている。
欧州最大級で、侵攻後にロシアが掌握しているザポリージャ原子力発電所の運営をめぐる対立も深刻だ。米国はウクライナ、米国、ロシアが共同で権益を持ち、運営は米国側が担う案を検討しているとされる。これに対しウクライナは、ロシアを排除し米国とウクライナが50対50で合弁会社を設立して運営する方式を主張した。しかし、ロシアはいずれの案にも否定的な姿勢を示している。













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