
先週、カザフスタンの首都アスタナで開かれた旧ソ連圏諸国の経済協力体、ユーラシア経済連合(EAEU)の首脳会議で、異例の共同声明が発表された。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を含む、ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、キルギスの4か国首脳の共同名義で出された声明は、加盟国のアルメニアを事実上威圧するものだった。共同声明では、アルメニアが先月初めに欧州連合(EU)と首脳会議を開き、協力を強化したことについて、EAEU加盟国の経済安全保障に対する重大な脅威と位置づけている。そのうえで、アルメニアに対し、EAEUに残留するのか、EU加盟を目指すのかを決める国民投票の実施を求めた。さらに2日、ロシアの食品検疫当局は、アルメニア産果物が衛生基準を満たしていないとして輸入停止を発表している。ロシアは7日に予定されているアルメニア総選挙で、自国に有利な結果を引き出すための世論戦も進めている。
アルメニアは歴史的にロシアとの結びつきが深い国だ。ローマ帝国、ペルシア、オスマン帝国などの圧制に長年苦しんだアルメニアは、17世紀から同じキリスト教圏の帝政ロシアに接近し、生き残りを図る道を選んだ。ソ連崩壊で別々の国家となった後も、両国は緊密な関係を保ってきた。ところが近年、アルメニアがEUや米国と経済、資源、安全保障など幅広い分野で協力を強め、脱ロシアの動きを見せると、ロシアによる多方面の攻勢が本格化している。

ロシア、地域支配力の低下を警戒
アルメニアは旧ソ連15か国のうち、面積は朝鮮半島の13.5%で最も小さく、人口は310万人とソウル市の3分の1程度にとどまる。こうした小国の動きにロシアが敏感に反応するのは、アルメニアが地政学上の急所にあたるためだ。アルメニアが位置する南コーカサスは、中東、欧州、中央アジアを結ぶ要衝でもある。アルメニアが西側陣営に加われば、ロシアは200年以上にわたり自国勢力の中東進出ルートとしてきた南コーカサスへの支配力を急速に失いかねない。アルメニアは北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコ、米国と戦争状態にあるイランと国境を接している。
ロシアのアルメニアへの影響力が後退すれば、NATOの東方拡大が進み、ロシアとイランの連携は遮断されるとみられる。これは、アルメニアとともにロシア主導の旧ソ連圏協力機構に参加する他国の動揺にもつながりかねず、プーチン大統領が必死に対応しているとの見方もある。ユーラシア専門家で米ストーンヒル大学のアンナ・オハニャン教授はフランス24のインタビューで「アルメニアはロシアの周辺国という立場から抜け出すために外交政策を多角化しているが、プーチン大統領はロシアを基準にした地政学的な二分法を当てはめようとしている」と述べた。

総選挙を前にロシアの世論操作疑惑も
先月5日、アルメニアの首都エレバンで開かれたアルメニア・EU首脳会議で、双方はエネルギー、通商、安全保障など幅広い分野の協力について協議した。EUは3,000万ユーロ(約55億7,000万円)規模の軍事支援も約束している。これに先立ち、アルメニア議会は3月にEU加盟推進案を可決し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もアルメニアを訪問した。
先月27日には、米国のマルコ・ルビオ国務長官がエレバンを訪れた。この訪問を通じ、アルメニアは米国と、鉱物資源の供給や、アルメニア、アゼルバイジャン、トルコを結ぶ輸送路の整備に関する協定を締結した。プーチン大統領から見れば「挑発」と受け止めてもおかしくない出来事が、息つく間もなく相次いでいる。
アルメニアとロシアの関係に異変が生じ始めたのは2023年からだ。アルメニアは、アゼルバイジャンと30年以上続けてきた領土戦争の過程で、ロシアが自国を支援しなかったことに強い失望を抱いた。アゼルバイジャンは旧ソ連圏に属する一方、イスラム教国でもある。これを受け、アルメニアは旧ソ連圏諸国による軍事安全保障同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議や合同訓練に参加せず、不満を示している。その後、外交の多角化を掲げ、親西側・脱ロシア政策を加速させた。
アルメニアの政策転換を主導しているのは、2018年から政権を率いるニコル・パシニャン首相だ。ジャーナリスト出身のパシニャン首相は、民主化デモで親ロシア政権を退陣に追い込んで政権を握り、アゼルバイジャンとの戦闘終結後は親西側政策をさらに推し進めている。3期目を目指すパシニャン首相が7日の総選挙で勝利すれば、アルメニアの脱ロシア・親西側路線には一段と弾みがつく可能性がある。このため、今後数日間、反西側世論をあおろうとするロシアの総攻勢はさらに激しさを増すとの見方が出ている。欧州議会調査局は「ロシアによるアルメニア選挙への介入や世論操作の試みが激しく進んでいる兆候が現地で確認されている」と指摘した。
















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