米保守派も終戦MOUを批判 約48兆円規模のイラン復興基金巡り波紋
米国、イラン原油輸出を47年ぶりに許可
凍結資産解除は「核放棄」が条件
ホルムズ海峡の主導権も事実上イラン側に
トランプ大統領「最終案ではない」と線引く
米国とイラン間の終戦覚書(MOU)を巡り、厳しい評価が相次いでいる。3,000億ドル(約48兆2,000億円)規模とされるイラン復興基金の創設や原油禁輸措置の解除など、確実な非核化の成果もなく米国が一方的に譲歩したとの見方が広がっているためだ。米政府関係者や支持層の間でもドナルド・トランプ米政権がイランとの交渉で「完敗した」との見方が強まっている。
16日(現地時間)一部内容が明らかになったMOUによると、復興基金について「米国は地域のパートナー国とともにイランの復興および経済発展計画を策定し、実施方法を60日以内にまとめる」と規定されているという。

ロイター通信は復興基金全体の半分以上が既に拠出が約束されており、日本、韓国、シンガポール、マレーシアのほか米国企業も参加する見通しだと報じた。基金創設はカタールが提案し、米政府の調整の下、湾岸諸国や東アジア諸国の民間投資を前提としているという。融資や信用供与、施設復旧への投資などが想定され、対象分野にはエネルギー、物流、製造業、輸送インフラなどが含まれる。
米国が同盟国と十分な協議もせずに対イラン戦争を開始し、その後始末を同盟国企業に委ねようとしているとの批判も出ている。この基金は実質的にイランへの「補償」の性格が強いとされる。一方でトランプ大統領は基金構想そのものは否定せず「米国は1セントたりとも負担しない」との立場を示している。

トランプ政権が19日の署名直後にイラン産原油に対する禁輸措置を一時解除するとの報道も浮上した。制裁緩和の対象には、イラン産原油の販売に伴う金融取引や輸送、保険など関連サービスも含まれるという。原油輸出を巡る制裁が解除されれば、1979年のイラン・イスラム革命を受けて米国が資産凍結や貿易制限などの制裁を開始して以来、47年ぶりとなる。イランには当面、多額の資金流入が見込まれる一方、具体的な措置に応じて見返りを与えるという米国の従来の行動対行動原則とは相反するとの指摘もある。
一方、米国は凍結資産の解除を含む大幅な制裁緩和については、今後の交渉でイランが核放棄措置を講じた場合に限り、段階的に実施する方針としている。

イスラエル、連日レバノン空爆…戦火なお収まらず
ホルムズ海峡の主導権は今後もイランが握る可能性があるとの見方も出ている。米CNNは16日、関係者の話として、現在の終戦合意ではイランによるホルムズ海峡の再封鎖を防ぐことはできないと米情報当局が判断していると報じた。
また、イランの濃縮ウラン処理は今後の本交渉で扱われる見通しで、最終合意まではイランの核開発計画も現状のまま維持されるとされる。このため、現時点で米国が得た実利は限定的だとの分析が出ている。
米保守派からも今回の終戦合意ではイランの核開発を十分に抑え込めず、経済的な余力を与えることでミサイル戦力などの再建を後押ししかねないとの懸念が示されている。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の保守系コラムニスト、ブレット・スティーブンス氏は「イランとの終戦合意は大惨事だ」と批判し「トランプ大統領はイラン政権が直ちに崩壊せず、エネルギー価格が急騰すると恐れ、自ら始めた戦争を放棄した」と指摘した。また、米ミズーリ科学技術大学のイラン専門家、メルザド・ボルジェルディ氏はNYTに対し「イランがこれほど深刻な軍事的敗北を喫しながら外交的勝利を収めた例は前例がない」と語った。
こうした批判を意識したためか、トランプ大統領は報道されている合意内容について「最終案ではない」と強調した。17日、ロイター通信によると、フランスで開かれている主要7カ国(G7)首脳会議に出席中のトランプ大統領は「もし内容が気に入らなければ、再び彼らに向けて発砲し、頭上に爆弾を投下する」と述べたという。続けて、イランに対する即時の制裁緩和は今回のMOUには盛り込まれていないと付け加えた。













コメント0