トランプ大統領の大統領職利用による巨額収益、歴史上前例なし

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、米国のドナルド・トランプ大統領のように大統領職を利用して巨額の収益を得る例は、歴史上前例がないとして、過去の事例と比較しながら批判した。
同紙は、トランプ大統領が大統領職に伴う利益相反などの潜在的な問題を解消するよりも、新たな事業機会を模索していることは、歴代大統領が長年守ってきた慣行に反すると指摘している。
米国のリンドン・B・ジョンソン元大統領の妻は収益性の高いラジオ放送局を所有し、米国のジョージ・W・ブッシュ元大統領は、父であるジョージ・H・W・ブッシュ元大統領がホワイトハウスにいた時期、石油会社の取締役を務めた。ハンター・バイデン氏は、父のジョー・バイデン前大統領が副大統領を務めていた間、ウクライナの天然ガス会社から報酬を受け取っていたという。
しかし、6月30日に公開された財務開示書によると、ホワイトハウス復帰後の1年目に、大統領としての措置によって恩恵を受けた暗号資産事業から約14億ドル(約2,300億円)の新たな収益を得た大統領は、米国史上トランプ大統領が初めてだった。
トランプ大統領の2025年の収入は少なくとも22億ドル(約3,600億円)に達し、大統領就任前年の2024年における少なくとも6億2,200万ドル(約1,010億円)と比べ、3倍を超えた。
米国の税務弁護士で、建国から250年に及ぶ歴代大統領の資産史を扱った著書『オール・ザ・プレジデンツ・マネー(All the Presidents’ Money)』の著者、ミーガン・ゴーマン氏は、「歴代大統領は、利益相反を招きかねない企業との関係から自らを切り離すための措置を取ってきた」と述べている。
米バージニア州マウント・バーノンにあるジョージ・ワシントン大統領図書館の館長、リンジー・M・チェルヴィンスキー氏は、「公職は、収入源ではなく、むしろ借金を負う要因だった」と語った。
これに対し、トランプ大統領とその家族は正反対の行動を取り、ホワイトハウス復帰後にトランプ大統領が進めた措置から利益を得る新たな事業を展開しているという。
その一例として、トランプ大統領が2025年10月、暗号資産業界で最も裕福とされる人物で、暗号資産取引所バイナンスの創業者でもあるチャンポン・ジャオ氏に恩赦を与えたことが挙げられる。バイナンスは、トランプ家の暗号資産事業にとって重要なビジネスパートナーである。
トランプ大統領は2025年7月、ステーブルコインの普及を促す「GENIUS法」にも署名した。トランプ家が支援する企業が独自のステーブルコインを発行してから4か月後のことだった。
ゴーマン氏は、トランプ大統領の行為について、多くの点で「米国の社会契約に対する裏切り」だと批判し、「国を導く者は自分よりも国家を優先すべきだという前提、すなわちジョージ・ワシントンの時代までさかのぼる原則に対する裏切りだ」と強調した。
トランプ大統領とホワイトハウスは、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男のエリック・トランプ氏が家業を運営しているため、利益相反はないと主張している。
しかし、トランプ大統領は、家族が所有する暗号資産会社「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」の共同創業者でもあり、大統領選での当選後、就任の3日前には暗号資産トークンの一種であるミームコイン「TRUMP」も立ち上げた。
トランプ大統領の就任直後に当たる2025年2月、米証券取引委員会(SEC)は、ミームコイン型トークンはSECの監督対象ではなくなると表明した。
サウジアラビア政府が関与する案件を含む、同国に拠点を置く開発業者との不動産取引は、トランプ大統領とその息子たちに数千万ドルの新たな収益をもたらしている。
トランプ大統領の息子たちは最近、防衛関連企業に投資したほか、重要鉱物を供給する鉱山の建設に向け、数十億ドル規模の連邦支援の獲得を目指す企業にも出資している。
同紙は、こうしたトランプ大統領と家族の行動が、歴代大統領の対応と対照的だと伝えた。
米国のジョージ・W・ブッシュ元大統領は大統領選で当選する前にメジャーリーグ球団テキサス・レンジャーズの持ち分を売却し、米国のジミー・カーター元大統領は自身のピーナッツ農場の運営を独立した受託者に委ねた。
大統領史の研究者らは、ホワイトハウス入りの直前に新規事業を始め、在任中に私的利益を得た大統領は、米国史上トランプ大統領以外にいないとしている。
むしろ、潜在的な利益相反を避けるために取り組んだ例は数多くあるという。
米国のウォレン・G・ハーディング元大統領は在任中もオハイオ州の新聞社を所有していたが、その企業は一族が約40年間にわたり保有してきたものだった。投資を巡る疑問が持たれると、ハーディング元大統領は新聞社を売却することで合意した。
米南メソジスト大学の大統領史センター所長、ジェフリー・A・エンゲル氏は、「歴代大統領は、自身の意思決定に影響を及ぼしたり、公職に求められる倫理性を損なったりしかねないものとは無関係であることを示すため、懸命に努めてきた」と語った。
エンゲル氏は「トランプ政権は正反対の方向に進んでいるようだ。こうした行為をあまりにも多く重ねても、人々は異常だと思わないと勘違いしているように見える」と指摘している。















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