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トランプ次期大統領がメディアを相手に巨額の訴訟を次々と提起、報道の自由に対する影響と自己検閲の懸念高まる

佐藤美穂 アクセス  

ドナルド・トランプ米次期大統領が、メディアを相手に巨額の訴訟を次々と起こし、米国内で論争が巻き起こっている。莫大な弁護士費用の負担を強いられるメディアが自己検閲に走り、批判が弱まるのではないかという懸念が出ている。

トランプ次期大統領は先月の大統領選直前、共和党優勢のアイオワ州の世論動向を誤って報じた同地域の有力紙「デモイン・レジスター」を相手に、先月16日(現地時間)に民事訴訟を提起した。同紙は大統領選(11月5日)直前、アイオワ州で民主党のカマラ・ハリス候補が47%の支持率で、トランプ次期大統領(44%)を僅差で上回ったと報じた。しかし実際には、トランプ次期大統領が13%以上の大差で勝利した。

トランプ陣営は「デモイン・レジスター」とその親会社に、世論調査を実施したベテランジャーナリストのJ・アン・セルザー氏(68歳)を相手取り訴訟を起こした。トランプ陣営は訴状で、誤りとなった世論調査の結果には「意図」が介在したとし、新聞社が一種の「選挙介入」を行ったと主張した。誤った世論調査結果のせいで大勝できるはずの地域に、より多くの選挙資金を投入せざるを得なくなり、有権者も欺かれたとして賠償を求めた。

トランプ次期大統領はハリス候補のインタビューを問題視し、CBSニュースに対しても100億ドル(約1兆5,753億円)規模の訴訟を大統領選直前に起こしていた。CBSがインタビュー内容を、トランプ次期大統領側に不利になるよう編集したという理由からだ。

メディアを相手にした前例のない巨額訴訟は、副作用を呼んでいる。トランプ次期大統領に、事実上「白旗」を揚げるメディアが現れ始めた。ABC放送は最近、トランプ陣営が起こした訴訟を終結させる条件として、1,500万ドル(約23億6,331万円)の和解金を支払うことに同意した。

以前、ABC放送のアンカー、ジョージ・ステファノプロス氏が、トランプ次期大統領の28年前の性的暴行容疑事件を「レイプ」と表現したことで、トランプ陣営が名誉毀損で訴えた。ABC放送は和解金の支払いに加え、遺憾の意を表明する謝罪文も発表した。トランプ政権2期目での放送事業者の免許更新などを意識したABCが、生き残りをかけてやむを得ない選択をしたのではないかとの見方が出ている。

トランプ次期大統領のメディアに対する相次ぐ訴訟に、支持者たちは歓喜しているが、巨額訴訟がメディアの自由を奪う結果につながりかねないという懸念も浮上している。大多数のメディアがトランプ次期大統領に関する否定的な内容を報道する際に萎縮したり、自己検閲を行う恐れがあるというのだ。

米国では、高位公職者がメディアを相手に名誉毀損訴訟で勝訴する可能性は低いとされる。表現の自由を保障した合衆国の憲法修正第1条に基づき、米国連邦の最高裁判所は、メディアを相手取った高位公職者の名誉毀損訴訟において「現実的悪意(actual malice)」の有無を判断基準とする「ニューヨーク・タイムズ社対サリバン事件」の判例(1964年)を確立したためだ。

高位公職者に対する名誉毀損を理由とした損害賠償請求事件では、報道機関が虚偽であることを知りながら事実であるかのように報道したか、虚偽である可能性を無視したことを原告が証明しなければならないと規定した判決である。

ジャーナリズム保護団体「CUNY」の責任者ジョエル・サイモン氏は米政治紙「ザ・ヒル」とのインタビューで、トランプ次期大統領の「デモイン・レジスター」相手の訴訟について「『現実的悪意』基準に基づき、善意で行った報道は保護されるため(トランプ次期大統領の)法的勝訴の可能性は低い」としながらも、「しかし小規模メディアや資金力の乏しいメディアの場合、訴訟での法的防御が非常に困難になる恐れがある」と指摘した。

メディア訴訟の専門弁護士デイビッド・コルゼニック氏も「ワシントン・ポスト」(WP)のインタビューで、メディアを相手取った巨額訴訟について「費用と疲労感でメディアの機能を麻痺させることが目的かもしれない」と分析した。

佐藤美穂
editor@kangnamtimes.com

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