平和到来で衝撃不可避…失業・賃金下落・社会不安の懸念
トランプ大統領の平和交渉や欧州の制裁圧力にも消極的な理由
周辺国も「飛び火」懸念…帰還兵のトラウマに警戒
ウクライナ戦争が3年目を迎える中、ロシアは国家経済の構造を軍需産業中心の「戦時体制」へ完全に再編したと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が27日(現地時間)に報じた。これは、ドナルド・トランプ米大統領が目指す停戦の動きとは大きくかけ離れている。

プーチン大統領は開戦当初から長期戦を見据え、国家の総力を結集してきた。戦車や大砲などの武器生産を過去最高水準に引き上げ、年収相当の入隊ボーナスを提示して大規模な兵力動員を行った。一時は1日1,000人以上が志願する事態も起きた。
この軍事力増強により、ロシアは開戦初期のウクライナ首都キーウ占領失敗による損失を挽回したとの分析がある。最近1か月間でウクライナ領100平方マイル(259㎢)以上を新たに占領するなど、西部戦線で再び攻勢に出ている。
これについて、プーチン大統領がトランプ大統領の平和交渉要求に慎重な姿勢を保ちつつ、欧州各国の圧力にも屈しない意志を示していると解釈されている。
プーチン大統領のこうした対応は、即時に戦争が終結すればロシア経済が長期にわたり成長停滞を余儀なくされるためだとの分析がある。欧州政策分析センター(CEPA)の上級研究員であるアレクサンダー・コリアンドル氏は「ロシア経済は、今や軍需産業が成長のエンジンとなっている」とし、「当面、軍事支出の削減は事実上不可能だ」と指摘した。
ロシア政府は、今年の国防予算を1,450億ドル(約20兆9,408億6,588万円)以上に増額し、総予算の32.5%を国防に充てた。これは旧ソ連崩壊後、最大規模に値する。武器工場は24時間体制で稼働し、軍需産業の賃金は大幅に引き上げられ、地方の低所得層の生活水準を向上させた。いわゆる「戦争特需」である。
このような状況下で平和が訪れれば、軍需産業縮小に伴う大規模な失業や賃金下落、社会不安が避けられないとの懸念が強い。ドイツ・ベルリン自由大学の研究員であるボロディミル・イシェンコ氏は「数十万の武装兵力を短期間で民間に戻すのは極めて危険だ」と警告し、「国家が彼らを失望させれば、社会的緊張が爆発する恐れがある」と述べた。
ロシア戦略技術分析センターのルスラン・プホフ所長も「ウクライナ戦争のような実存的危機がなければ、現在のように防衛産業に巨額の予算を継続投入することは正当化できない。プーチン大統領は世論に極めて敏感だ」と指摘した。
バルト三国やカザフスタンなどの周辺諸国も「ウクライナ戦争終結後、ロシアの戦時経済が自国を脅かす可能性がある」と不安を表明している。旧ソ連時代のように帰還兵が国内の不安定要因となる可能性への歴史的トラウマも根強い。
また、賃金・生活水準の向上にもかかわらず、最近の原油価格下落や西側の追加制裁、生産・消費・輸出の鈍化などにより、ロシア経済には景気後退の兆候が顕著に現れている。軍需産業の海外輸出拡大も、アジア・アフリカ市場でのシェア低下、信用依存、品質低下などの壁に直面している。
専門家らは「戦争が終結してもロシア経済は短期間で非軍事・民間中心に転換するのは困難だ」とし、「財政引き締めや失業、社会的不満などの後遺症をいかに管理するかがプーチン政権の最大の課題となるだろう」と口を揃えた。