
ドナルド・トランプ米大統領が主導する関税政策により、今後10年間で2兆8,000億ドル(約400兆円)の財政赤字が減少し、トランプ大統領と共和党が推進する減税法案により10年間で2兆4,000億ドル(約343兆円)の財政赤字が発生すると予測された。
長期にわたる予測であるため断定は難しいが、大まかに見ると減税法案で財政赤字が増加するものの、関税政策でこれを補填し、最終的に4,000億ドル(約57兆円)程度の財政黒字が生じる計算になる。
まず、ドナルド・トランプ大統領が就任以降、貿易相手国に課した関税だけで米国が今後10年間で財政赤字を2兆8,000億ドルまで削減できることが明らかになった。
5日(現地時間)ブルームバーグによると、米議会予算局(CBO)は野党・民主党の要請に応じ、トランプ大統領の関税政策を分析した資料を公開したという。
CBOは、トランプ大統領が5月13日までに実施した関税引き上げ措置が2035年までに財政赤字を2兆5,000億ドル(約357兆円)程度削減すると予測した。
また、これに伴う連邦政府の借入減少により5,000億ドルの利払い費が節減され、合計で2兆8,000億ドルの財政赤字縮小効果があると見込んでいる。
CBO「トランプ関税効果で米国の財政赤字2兆8,000億ドル減少」
しかし、これにより景気が冷え込み、物価が今年と来年に0.4ポイント上昇し、家計の購買力が低下すると予測された。その結果、米国の国内総生産(GDP)は毎年0.06ポイント減少すると見込まれている。
CBOは、トランプ政権が今後関税政策を自由に変更できるため、今回の予測には高い不確実性があると付け加えた。
CBOの分析に反映された関税措置には、中国製品に対する30%の追加関税をはじめ、カナダおよびメキシコ産品に対する25%の関税、自動車部品や鉄鋼・アルミニウムなどに対する25%の関税が含まれている。
トランプ大統領は最近、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を50%に引き上げたが、CBOの分析には反映されていない。
先にトランプ大統領は、4月に米国の貿易相手国に基本関税10%を課した後、韓国を含む60か国余りに個別の相互関税を課すことを決定した。
ただし、7月9日までの90日間、相互関税を猶予し、個別交渉を進めることになっている。
超党派機関であるCBOの分析は、トランプ大統領と共和党に有利に働くとみられている。
共和党は現在、上院で様々な減税案を盛り込んだ法案の処理に向けて交渉中だ。
この法案には、個人所得税率の引き下げ、法人税最高税率の引き下げ、標準所得控除と子供の税額控除の拡大など、今年末に終了予定の主要な減税条項を延長する内容が含まれている。
政府の財政負担を軽減するため、低所得者向け医療保険のメディケイドなど既存事業の予算削減も盛り込まれている。
下院を通過した法案が上院でも可決されれば、米国内で1,090万人が健康保険の恩恵を失うと予想されている。
それにもかかわらず、米連邦政府の財政赤字増加は避けられないとみられている。
CBO「トランプ減税法案、成立すれば2兆4,000億ドルの赤字増加」…マスクも連日批判
先にCBOは、下院法案がそのまま施行された場合、今後10年間で米国の財政赤字がさらに2兆4,000億ドル増加すると試算した。
現在、米国政府の負債は約29兆ドル(約4,150兆円)に達しており、2034年までに50兆ドル(約7,150兆円)に達する見通しだ。
格付け会社ムーディーズが先月、米国の国家信用格付けを最高格付けから一段階引き下げたのも、政府の負債が原因だった。
共和党は減税法案を通過させても、トランプ政権が導入した関税収入が支出を相殺できると主張している。
しかし、共和党内でも小さな政府と健全財政を主張するランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)など正統保守派は、下院を通過した法案をそのまま処理することに否定的な姿勢を示している。

トランプ政権発足初期に政府効率化省(DOGE)の責任者として連邦政府の構造改革作業を主導したテスラCEOのイーロン・マスク氏も、法案について公然と批判している。
マスク氏はこの日もXに投稿し、トランプ政権の減税法案への批判を続けた。
彼は連邦下院でこの法案通過を主導したマイク・ジョンソン下院議長が自身の立場を擁護する記者会見の動画に「この法案を実際に読む人は誰もそれを受け入れられないはずだ」とコメントした。
また、別の投稿で「新法案は赤字を大幅に増やしてはならず、負債上限を5兆ドル(約715兆円)も引き上げるべきではない」と強調した。
マスク氏のこうした主張に、共和党所属のマイク・リー上院議員(ユタ州)やランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)らが賛同する投稿を行った。
現在、上院では共和党が53議席を占める多数派だが、造反票が4票以上出れば法案は否決される。