
ドナルド・トランプ米大統領と共和党が推進中の大規模減税改革案が、今後10年間で米国の国家債務を3兆3,000億ドル(約472兆948億9,965万8,375円)増加させるとの分析が出た。米議会予算局(CBO)は29日に発表した報告書でこのように試算し、法案が可決された場合、約1,180万人の米国民が健康保険を失うことになると警告した。
今回の法案は、トランプ大統領が7月4日の米国独立記念日までの成立を目指す自身の大統領選公約の核心的立法課題で、前政権時に実施した大規模減税措置の延長とともに、「メディケイド(低所得者向け医療扶助)」や食料支援の削減などを含む。これにより、財政赤字は下院を通過した既存法案(2兆4,000億ドル(約343兆2,651億3,799万2,585円)の赤字)より約9,000億ドル(約128兆7,244億2,675万円)拡大する見通しだ。
普段はフロリダ州の私有リゾート「マール・ア・ラーゴ」などで週末を過ごすトランプ大統領だが、今週末はワシントンDCのホワイトハウスに滞在し、共和党議員に対して同法案の可決を強く迫った。上院は28日、野党の反発を押し切り51対49の僅差で法案の上程にこぎつけた。しかし、修正案の採決と本会議での可決までは依然として不透明感が強いとの見方が優勢だ。採決時、J.D.ヴァンス副大統領と共和党指導部は会議場外で反対派議員を説得するなど難航したとされている。
共和党は、今回の減税案延長が企業競争力の強化や投資の促進、そして所得税負担の軽減につながると主張している。一方、民主党は「数兆ドルを富裕層と大企業に与え、低所得層の福祉と医療を犠牲にする法案だ」と批判している。トランプ大統領は「米国経済は減税と規制緩和によってさらに強くなる」と述べた。
しかし一部では「公務員の人件費削減を掲げて数万人を解雇したトランプ政権が、実際には税収を減らし支出を増やし、国家財政をさらに悪化させている」との批判が出ている。政府効率化部門の責任者を務めたテスラのイーロン・マスクCEOが「この法案は既に巨額の財政赤字をさらに拡大させる」とトランプ大統領と対立していることも、トランプ政権が減税・規制緩和を名目に公務員を削減しながら、実際にはこの法案が財政悪化を深刻化させるという矛盾を指摘するものだと解釈されている。
今回の税制改革案はトランプ大統領の核心的公約の一つだが、米国社会における格差拡大や福祉後退への懸念も高まっており、今後議会内の論争がさらに激化すると予想される。
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