中国製旅客機が初の国際線へ 「空の覇権」に向けた着実な歩み

中国が独自開発した小型旅客機「C909」が、ついに国際線の商業運航を開始した。これは中国が「航空強国」を目指して進めてきた国家戦略の一環であり、中型機「C919」の運航拡大と合わせて、空の主導権を握ろうとする中国の存在感が強まりつつある。
国有企業である中国商用飛機(COMAC)が開発したC909は、2016年に商業運航を開始して以来、166機が中国国内や東南アジア、中央アジアの航空会社に引き渡され、累計2,400万人以上を輸送してきた。今回の運航では、中国内モンゴル自治区のフフホトからモンゴルのウランバートルまでを結び、中国国際航空が担当した。中国国際航空は同機の導入を35機まで拡大し、1日100便超を飛ばしている。
一方で、中国の「空の野望」には課題も多い。C909やC919はボーイングやエアバスに対抗する中国独自の機体として注目されるが、その「心臓部」ともいえるエンジンをはじめとする主要部品は、いまだに米国やEUの技術に依存している。米中貿易摩擦の影響で、アメリカがエンジン部品の対中輸出を制限する動きも見せており、技術の自立性に疑問符がつく。
さらに、これらの中国製機体は、欧米市場への参入に不可欠な「型式証明」を取得できていない。そのため、C909は運航開始から9年が経過しているにもかかわらず、国際線としては一部地域に限って使用されているのが実情だ。安全性の証明がなければ、欧米の空を飛ぶことはできない。
習近平国家主席は国産エンジンの開発を強く推進しており、中国製旅客機が「中国の心臓」で空を飛ぶ日を目指している。ただ、世界の航空市場を支配するボーイングとエアバスが立ちはだかるなかで、中国が真の「航空大国」となるには、まだ多くの壁を越えなければならない。
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