
戦略物資に分類されるレアアース(希土類)の確保のため、米政府は自国のレアアース生産企業に市場価格のほぼ2倍に達する最低価格を保証することを決定した。より高い価格を保証することで、価格競争力を武器に市場を支配してきた中国に対抗し、自国産業への投資を促す狙いがある。
ロイター通信は14日(現地時間)、米政府がレアアース市場における中国の支配力に対抗するため、独自の高価格設定システムを即時導入すると報じた。これに先立ち米国防総省は、ラスベガスに本社を置く自国のレアアース採掘企業「MPマテリアルズ」の優先株15%を取得し、筆頭株主となる契約を締結していた。これに加え、同社のレアアースに対して最低価格を保証することを決定した。この価格は現在の中国の市場価格のほぼ2倍に相当する。
永久磁石の原料として使用されるネオジム-プラセオジム(NdPr)については、1kg当たり最低110ドル(約1万6,367円)の価格を保証し、その差額を国防総省が負担する仕組みだ。現在のNdPrの市場価格は約63ドル(約9,375円)程度である。ただし、市場価格が110ドルを超える場合、超過分の30%は国防総省が回収する。
ロイター通信によると、1kg当たり110ドルは、コンサルティング会社「プロジェクトブルー」が提示した「持続可能な生産のための適正価格」(75~105ドル・1万1,160円~1万5,625円)をわずかに上回る水準だという。
市場では、この新しい価格設定が世界のレアアース生産企業全体にプラスの波及効果をもたらすと期待されている。一方で、自動車メーカーなど需要側には負担増となる可能性があるとの懸念も出ている。
コンサルタント会社「アダマス・インテリジェンス」のアナリスト、ライアン・カスティーユ氏は「今回のベンチマークが業界の新たな基準点となり、レアアース価格全体を押し上げることになるだろう」と分析した。また、ベルギーの化学素材企業「ソルベイ」なども同様の価格水準を要求する根拠を得たと付け加えた。
ロイターによれば、中国は現在、世界レアアース供給の約90%を占めており、これは比較的低価格政策の結果だという。そのため、他の地域ではレアアースへの投資意欲が失われている状況だ。欧米の採掘企業は長年、独自の価格設定システムの導入を要求してきた。レアアース金属17種が不可欠な永久磁石の供給市場で中国と競争するためには、これが必要だと考えているからだ。
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