
ドナルド・トランプ米大統領は23日(現地時間)、日本に対して15%の関税を課す新たな貿易協定を発表した。数十年ぶりの高水準となるこの関税にもかかわらず、市場は安堵感を示し、アジアや欧州の株式市場が上昇。日経平均株価は3.5%以上、トヨタやホンダを含む自動車メーカーの株価は10%超の上昇を記録した。
市場が好感した背景には、トランプ大統領が以前から示唆していた25%以上の過激な関税措置が回避された点がある。たとえ15%でも、最悪のシナリオを逃れたとの見方から投資家心理は安定し、トランプ政権がもたらしていた極度の不透明感がやや和らいだと受け止められている。
今回の協定では、日本製自動車への関税が25%から15%へと引き下げられたことが交渉妥結のカギとなった。日本にとって自動車は輸出の中核を成す産業であり、全対米輸出のうち約37%を占めている。米国の自動車メーカーは引き続き無関税で国内市場を享受する一方、日本車には15%が課されることとなり、競争上の不利は残るものの、他国の輸出業者が25%の関税を課される中では「有利な譲歩」と受け取られている。
一方、経済学者の間では懸念の声も根強い。米競争企業研究所(CEI)のライアン・ヤング上級エコノミストは「米国と日本の双方にとって『敗北』の協定」と指摘し、関税負担の増加が米国の消費者、小売業者、さらには日本部品を使用する米国内の製造業者に打撃を与えると警告している。
実際に、すでに輸入品価格の上昇が始まっており、先月は家電や玩具、家具など複数の品目で値上がりが確認された。価格上昇によって企業の売上や個人消費の減速を招き、経済成長が鈍化するとの見通しも示されている。
野村証券のアナリストは23日付のメモで、「最近の関税水準は当初の10%を上回り、20%前後で固定化しつつある」と分析。また、鉄鋼や銅に対しても50%の高率関税が課されており、予想を上回る規模だと指摘している。
このような背景から、米国の実効関税率は平均で19.5%程度に落ち着くとの見方が有力で、これがインフレ圧力と成長鈍化の二重リスクをもたらすと懸念されている。多くの外国政府は今後も高水準の関税政策が継続されると見ており、ライバル国より有利な条件を得るための「譲歩」に迫られる可能性が高い。
自動車分野では、日本に15%、他国には25%の関税が課される構図が鮮明になっている。アンダーソン・エコノミック・グループのパトリック・アンダーソンCEOは、「ドイツやEUの高級車は25%の関税によって価格が1万5,000ドル(約219万円)上昇しており、これらの輸入は事実上ストップしている」と述べた。
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