
日立製作所、東芝、ソニーの液晶事業を統合して2012年に発足したジャパンディスプレイ(JDI)が、年内にも主力工場を閉鎖する方針を固めた。この工場ではApple Watch向けの有機EL(OLED)ディスプレイも生産されていたが、同事業からも撤退する見通しだという。
日本経済新聞は28日、JDIは千葉県茂原市にあるディスプレイパネル工場の閉鎖を前倒しする計画を進めている。当初は2025年3月までの操業を予定していたが、生産稼働率の低下が続いており、固定費削減のため前倒しが決断されたという。
茂原工場はかつて、iPhone向け液晶パネルの主力生産拠点だったが、AppleがiPhoneにOLEDを採用し始めてから受注が激減した。近年はApple Watch向けの小型OLEDや車載ディスプレイなどを生産していたが、いずれも需要が縮小し、工場の稼働率も大きく落ち込んでいたという。
JDIは茂原工場の一部設備を石川県の工場に移管することも検討していたが、コスト面から断念した。代わりに、関連設備を中国のディスプレイ大手HKCに売却することを決定したという。HKCは近年急成長を遂げ、大型パネルの出荷額では世界5位の規模とされている。
JDIは2018年度(2018年4月から2019年3月)にはApple関連の売上が3,800億円に達していたが、茂原工場の閉鎖によってこの売上はゼロになる見通しだという。
JDIは2012年、経済産業省管轄の官民ファンド「産業革新機構」からの支援を受けて誕生した。発足当初は「日の丸液晶連合」として日本のディスプレイ産業復活の旗手として注目されたが、その後は韓国や中国の技術力に押され、厳しい状況が続いている。
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