
政府が米国との関税合意に関する「進捗管理」体制の構築を急いでいる。米日間で関税率を相互に15%とする方針は決まったものの、実施時期が明確になっていないためだという。米国側は、日本による最大5,500億ドル(約81兆4,777億9,100万円)規模の投融資や米製品の購入が確認されなければ、再び関税を引き上げる可能性があるとの見方を示している。
日本経済新聞は29日、政府がこうした背景を踏まえ、関税引き上げを回避するためにも、合意内容の進捗を管理する組織の拡充を進めていると伝えた。
日米は今月22日、8月1日から予定されていた25%の相互関税と、すでに27.5%が適用されている自動車関税を、ともに15%に引き下げることで合意した。協議にあたった赤沢亮正経済再生担当相は、26日のNHK番組で「大統領令によって迅速に関税を引き下げてもらうよう、徹底して求めていく」と述べている。
一方、政府は日米合意の内容について、両国で共同の文書を作成する予定はないとしている。米国が他の各国とも並行して交渉を進めている中、実務面での対応が追いついていないという見方もある。
自動車業界では「1時間あたり1億円の損失が発生している企業もある」(赤沢経済再生担当相)として、早期の関税引き下げが最優先課題とされている。
政府としては、相互関税を8月1日に適用する方針で、自動車関税についてもできる限り前倒しでの実施を目指している。これに対し、米国側は具体的な実施時期を明示していない。日本経済新聞は「日米の利害が衝突する中で、合意内容の進捗管理が鍵を握る」と分析している。
石破茂首相は25日に開かれた関税に関する会合で、「今後の合意事項を着実に履行し、双方の利益拡大につながる成果を早期に実現することが極めて重要だ」と述べた。4月に発足した赤沢経済再生担当相と林芳正官房長官が主導する特別チームの機能を強化し、合意の履行状況の管理を指示したという。
ドナルド・トランプ米大統領はSNSを通じて「日本は私の指示で5,500億ドルを米国に投資する」と発信しているが、日本側の認識とはやや異なる。政府系金融機関による出資・融資・保証などが中心で、赤沢経済再生担当相は同日のNHK番組で「出資は全体の1〜2%程度にとどまる」との見方を示している。
スコット・ベッセント米財務長官は23日、米フォックス・ニュースのインタビューで「日本が合意を履行しなければ、自動車やその他製品の関税は再び25%に戻る可能性がある」と語っており、四半期ごとに履行状況を確認し、トランプ大統領が不満を抱けば関税を引き上げる可能性があるとの姿勢を見せている。
こうした中、与党・自民党と野党第一党の立憲民主党は、石破首相が出席する衆議院予算委員会を8月4日に開催し、今回の関税合意について集中審議を行う方針を示している。立憲民主党は「国益にかなった合意かどうかを、国会の場で首相に説明させたい」としている。
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