
欧州連合(EU)は、当初8月7日(現地時間)に発動予定だった対米報復関税を、6か月間延期する方針を明らかにした。
EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長の報道官は4日、声明を通じて「2025年7月27日、フォンデアライエン委員長とドナルド・トランプ米大統領が関税および貿易に関する合意に達した」と説明し、その上で「この合意は、米国とEUの市民や企業に安定性と予見可能性を取り戻すものだ」と述べた。
一方で報道官は、当時の合意が正式な文書として記録されていない点にも言及し、「EUは7月27日の合意に基づき、米国との共同声明の最終化に向けた作業を続けている」としている。
また報道官は、「こうした目標を念頭に、欧州委員会は8月7日から適用予定だった対米報復措置を6か月停止するために必要な手続きを進めていく」と付け加えた。
この対米報復関税の6か月間の延期については、5日に正式発表される見通しだとCNBCは伝えている。
EUは単一国家としては中国やカナダ、メキシコに次ぐ規模だが、27の加盟国全体としては米国最大の貿易相手となっている。
トランプ大統領は先月27日、フォンデアライエン委員長との間で貿易合意に至ったと発表していた。合意内容によれば、米国は自動車を含むEUからのほぼすべての輸入品に15%の関税を課すとしている。
ホワイトハウスはまた、EUが「米国の産業製品にかかるすべての関税を撤廃することを含め、大半の関税を撤回する」と明らかにした。
さらにトランプ大統領は、EUが米国産のエネルギーを7,500億ドル(約110兆4,192億6,000万円)相当購入し、対米投資を現在よりも6,000億ドル(約88兆3,250億7,400万円)増やすことに同意したと述べている。
しかしながら、この合意内容は具体性に欠けるとの指摘も出ている。
誰がどのように投資を行うのかが明記されておらず、EU欧州委員会に米国産の石油や農産物の購入を民間企業に促す権限もないのが実情だ。
EUは今回の声明で、当時の合意があくまで「政治的な合意」であり、「法的拘束力は一切ない」と強調している。
声明では、「当面は合意内容の履行よりも、米国とさらなる協議を行う」とした上で、「この政治的合意を完全に実行するために、必要な内部手続きが残されている」と述べた。
政治的合意を法的拘束力を持つ文書に転換するには追加の協議が必要であり、そのため、当初7日から適用予定されていた対米報復関税を6か月延期する必要があるとの立場を示している。
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